約二か月間の滞在を終えて某月某日帰国しました。
いやー、長かった、しんどかった。いつも「居候」として現地の生活にドップリ身を置くのは楽なことではないけれど、それにしても今回はとりわけしんどかった。
出口ナシ感が現地のみんなをトコトン苦しめていて、そのなかで、ときには数日おきに軍事侵攻にさらされながら、銃声や爆撃音のなかで眠ることもできなかった日々、仕事がなくお金がなく喜びや楽しみの少ない日々、10/7以降さらに締め付けが厳しくなった占領下で町から町への移動すら命がけ(少なくとも現地のひとはそう感じている)の日々、そんななかにトコトン身を置きながら、寝食をともにして、聴かせてもらい続けたみんなの胸のうち。
とてもここでは(ほんのさわりすら)書ききれないけれど、少しずつトークの場などでそんな日々のことを話していこうと思う。
まずは、国立から。
【一日講座】「パレスチナのちいさないとなみ」
日時:3月10日(日)13時半から15時半
場所:NHK学園くにたちオープンスクール
受講料:2800円
要申込
詳細やお申し込みやお問い合わせは下記のサイトをご覧ください
パレスチナのちいさないとなみ | 生涯学習オープンスクール | NHK学園 (n-gaku.jp)
約ふた月の滞在期間中のほとんどの時間を過ごしたジェニン難民キャンプでは、昨夜もまた軍事侵攻があり(文字どおり数日おき)、車のなかにいたふたりがドローンによる爆撃で暗殺されました。その現場はマハの家(わたしの居候先)の数軒先、マハからは家の前から撮った炎上する車を映した映像が送られてきた。恐怖に震える声、家族のひとりがなかなか帰ってこない、電話をしても応答がない(いつものこととはいえ)、そんな不安が声を震わせる。滞在中、そんな彼女を何度抱きしめたことか。いま、わたしは遠く離れた場所から、呆然とそれを見ているだけに過ぎない。マハと一緒に恐怖に震えるよりも、よほど辛い。
今日は、アブーアリーの命日です。今回もアブーアリーの思い出を、みんなで語りまくってきた日々だった。マハの誕生日にアブーアリーが用意してくれたプレゼントの話、サリームの結婚式の日に実現するはずだった約束。
今回、どうしても「行かなくては」と思ったのは、一番は親友のアブーアリーを失ったサリームのことが心配だったから。そして、一刻も早くアブーアリーの墓参りをしたかったから。アブーアリーの思い出を、みんなで語り合える時間は、わずかな「救い」だった。日本でずっとひとりでこの虚しさと哀しみと喪失感に打ちひしがれているよりも、思い出を語れる相手がいるということに、わずかに救われた。
アブーアリーの墓参りには、一度目はカマールが付き添ってくれた。彼が眠るお墓の石と土に触れると、涙が止まらなくなった。太陽がギラギラ照っていた。そんななか、声をあげて泣いた。カマールは「ミカ、泣くな。喜んでやれ。ようやく安らぎを得られたのだから。生きているよりずっといい」と、2014年に同じようにハムザが殺されたことを知って泣くわたしにかけた言葉と同じ言葉をかけた。
十年だよ、十年たっても何も変わっていない。ひとり、また一人と親しかった人間が殺されていく。過酷な占領下の尊厳の得られない暮らしに耐えかねた青年たち、巻き添えをくう人びとが、ひとり、また一人と殺されていく。
そんな難民キャンプの現実などを、国立では「最新報告」としてお話しできたらなと思う。もちろん、『パレスチナのちいさないとなみ』登場人物の「その後」なども。
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【こちらもぜひあわせてご覧ください】
【録画視聴版】
LunchTrip パレスチナ西岸地区便 ~報道されない日常を見つめて~ 12月9日ビサンで開催したトークの録画視聴申込み用サイト、3/11まで視聴可能とのことです。詳細は申込ページをご覧ください。
【録画視聴版】LunchTrip パレスチナ西岸地区便 ~報道されない日常を見つめて~ | Peatix
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2023年1月写真絵本『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(かもがわ出版)を刊行しました。
お近くの書店でのご注文をお待ちしております。
またパレスチナ・オリーブの皆川万葉さんとの共著『パレスチナのちいさないとなみ』もぜひ。
版元のかもがわ出版のページ
かもがわ出版|パレスチナのちいさないとなみ (kamogawa.co.jp)