世界の笑顔に出会いたい

写真家・高橋美香のブログ。 公園にいたノラ猫のシロと暮らす。 カメラを片手に世界を歩き、人びとの「いとなみ」を撮影。 著作に『パレスチナ・そこにある日常』『それでもパレスチナに木を植える』(未來社)『パレスチナのちいさないとなみ』(共著、かもがわ出版) 写真集に『Bokra 明日、パレスチナで』(ビーナイス)

2021年07月

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昨日、こちらのブログでも都教委への「公開質問状」送付に際しての「賛同者」を募りましたが、多くの方にご賛同者として参加していただき、ありがとうございました。賛同者のお名前を添付した質問状は、本日内容証明郵便で送付される(された)と聞いております。

昨日、「慌てて取ってつけたように」当該ページ「首都エルサレム」と記された横に、唐突に「註2」という追加の表記があらわれました。これは、おそらくページを作成するそもそも始めの段階から、「大した考えもなく(個人的な推測です)」適当に外務省のページをコピペしただけで、その際に注を付けるのを「忘れた」のだろうと推測されますが、こんな杜撰な仕事が一国の首都の、「平和の祭典(個人的にはその意義を信じていません)」開催地の、「教育」に携わる機関の「責任ある(嫌味です)」仕事なのだろうかと、疑問を呈します。あまりにも子どもたちに対して、また教育に対して無責任だと思います。

「註をつければ逃げられるというものではない」と、今朝、岡先生とも話し(メールですが)ました。訂正に際しても、いままでずっと間違ったことを堂々と表記して、子どもたちの「教育」コンテンツとしていたことについての謝罪や改変への断りの一文もなく(私が知る限り、ですが。もし、そのようなものが散見されましたらご教示ください)、「自分でものを考えずに」仕事を進めた結果、「註1よりも註2が先にある」という「とりあえず慌てて直しました」感あふれる当該ページに、ますます暗澹たる思いが募ります。
イスラエル国|ヨーロッパ|大会参加予定国・地域情報|児童・生徒向けコンテンツ|東京都オリンピック・パラリンピック教育 (metro.tokyo.jp)

「賛同者」の募集は終わりましたが、当該ページには最下部に「お問い合わせ」先も掲載されており、メール、電話等、直接抗議や叱咤激励?の声を届けることも可能です。友人から「ハガキを送った」と聞いて、「それは、より気持ちが伝わりそうだ」と、友人の粋な試みに感動した次第です。

つまり、ひとりでも多くの方に、この問題の根本的な部分に関心をお寄せいただき、今後の都教委の対応や回答について、ご注視いただき、一緒に考えてもらえれば幸いです。特に、東京都在住の方、東京都の学校にお子さんが通っていらっしゃる保護者の方、教育に携わる方、ぜひとも「他人ごと」ではなく、「自分のこと」として考えてもらえますように。

それでは、あらためて、本日28日に送付された「公開質問状」を転載します。細部までうまく転載できていない部分はお許しください。

昨日写真ナシで投稿したところ、大意なくテキトーに選んでこのブログのホーム画面になっている「ナザレの猫」の写真が、この真剣でシリアスな内容の投稿の「記事の見出し画像」としてあらわれてしまって、昨日一日中「しまったー」と思っていたので、今日は、なにかパレスチナの写真を選びます。難民キャンプの壁画の写真にしました。
(ここまでの文章は高橋が書きました。線以下は「公開質問状」最終版です)

***************************


「東京都オリンピック・パラリンピック教育」で提示されている

イスラエルとパレスチナの資料の問題について

~問題点の指摘と質問~


2021年7月28日

東京都教育委員会 教育長  藤田 裕司 殿

             教育委員  遠藤 勝裕 殿

山口 香 殿

秋山 千枝子 殿

北村 友人 殿

新井 紀子 殿

東京都教育庁 指導部 指導企画課 オリンピック・パラリンピック教育担当者殿

                                         

鵜飼 哲(一橋大学名誉教授)

臼杵 陽(日本女子大学教授) 

岡 真理(京都大学教授) 

栗田 禎子(千葉大学教授)

黒木 英充(東京外国語大学教授) 

小寺 隆幸(元東京都教員、元京都橘大学教授)

酒井 啓子(千葉大学教授)

高橋 美香(写真家)

長澤 栄治(東京大学名誉教授)

奈良本 英佑(法政大学名誉教授)

嶺崎 寛子(成蹊大学准教授)


  様々な意見がある中でオリンピックが始まりました。これに向けて東京都教育委員会(以下、都教委とします)は、「東京都オリンピック・パラリンピック教育」実施方針(平成28年1月)を策定し、都教委傘下のすべての学校に「オリンピック・パラリンピック教育」の実施を指示し、各校で取り組んできました。

https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/opedu/static/page/admin-school/pdf/20q1e202.pdf

都教委の「オリンピック・パラリンピック教育」についても様々な意見がありますが、この取り組みの目標の(4)として、「多様性を尊重し、共生社会の実現や国際社会の平和と発展に貢献できる人間」の育成が掲げられています。

ところが、東京都教育委員会のホームページに設けられている「オリンピック・パラリンピック教育」のサイトの「児童・生徒向けコンテンツ~大会予定参加国・地域情報」では、「ヨーロッパ|イスラエル国」という表題の下に「首都 エルサレム」と何の注釈もなく記されています。

https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/children-student/watch-learn/europe/israel

なお資料1に示すように、「注2」が最後に付されていますが、何に対する注なのかどこにも書かれていません。外務省のホームページの記述(資料3)と対応させると首都エルサレムに(注2)をつけ忘れたと考えられますが、ミスで済む話ではありません。この数年間、「オリンピック・パラリンピック教育」でこのサイトを見た子どもたちは、エルサレムがイスラエルの首都であるという国際的には認められておらず、日本政府・外務省も認めていない虚偽の事実を教えられていることになります。 追記

イスラエル政府は1980年にエルサレムを恒久首都と定める「基本法」(憲法に匹敵)を制定しました。しかしこれは1967年の第三次中東戦争で東エルサレムを占領し、さらに併合したうえで首都としたものであり、占領地の併合は明確な国際法違反です。1947年の国連総会決議は、エルサレムを「国際管理地区」に指定しました。その後1967年の第三次中東戦争に際し、国連は、停戦後、イスラエルに占領地からの撤退を要求する安保理決議242号を採択し、それを今日もなお維持しており、それに基づいて日本政府もエルサレムを首都と認めておりません。また1993年の「オスロ合意」は、エルサレムの地位をイスラエルとPLOの交渉事項としています。

現在、イスラエルと国交のある国のほとんどはテルアビブに大使館を置いており、エルサレムに大使館があるのは、アメリカ合衆国(トランプ政権の2018年5月以来)、グアテマラ、コソボ、ホンジュラスの4か国に限られます。パラグアイはいったんエルサレムに移したものの、新大統領の選出後直ちにテルアビブに戻しました。エルサレムをイスラエルの首都と認めることは、国際法と国連安保理決議、さらにはそれらを支える国際社会の圧倒的な合意に反する行為なのです。

イスラエルの一方的主張をそのまま教えることは、戦争による占領地の武力併合を容認することになり、国際法、そして日本国憲法の精神にも反するものです。


一方上記の「児童・生徒向けコンテンツ~大会予定参加国・地域情報」では「アジア|パレスチナ」という表題の下に「首都 ラマッラ(西岸地区)」とやはり注釈なく記されています。

https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/children-student/watch-learn/asian/palestine 

しかし、パレスチナ自治政府は基本法でエルサレムを首都と定めていますが、現在はイスラエルが東エルサレムを占領しているため、パレスチナ自治政府はラマッラにおかれています。日本政府は「エルサレムの最終的地位については,将来の二国家の首都となることを前提に,交渉により決定されるべきである」としています。

(外務省「中東和平についての日本の立場」令和2年3月17日

               https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/middleeast/tachiba.html


国際法で認められていないイスラエル政府の主張はそのまま認めてエルサレムを首都と教え、一方、パレスチナ自治政府の主張は認めず、日本政府・外務省の立場とも異なってラマッラを首都と教えるということは、公正性と論理的整合性に欠けています。「注2」をつけ忘れた単純ミスである、また、本来「自治政府所在地」とすべきところを「首都」と教えるのも単純ミスである、あるいは子どもにわかるように教育的配慮をしたものである、として済む問題ではありません。子どもたちが間違った事実を教えられたという厳然たる結果に都教委は責任を持たねばなりません。


コロナ禍でのオリンピックの在り方に世界の目が注がれ、とりわけ東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会自体の人権意識が厳しく問われている今、この問題についても、開催都市の教育委員会として早急に見解を明らかにし、必要な措置を取る必要があると私たちは考えます。「共生社会の実現と国際社会の平和と発展に貢献する」人間を育てる教育委員会として、誠実な対応を取ることで、国際社会の信頼に応えていただきたいと思います。

★7月27日に「首都 エルサレム(注2)」と、注2が突然書き加えられているのを確認しました。


《都教委への質問》

  1. 外務省見解に反し、都教委がエルサレムを注釈抜きにイスラエルの首都と数年間明記してきた事実について都教委の見解を明らかにしてください。たとえ「注」の付け忘れという単純ミスであったとしても、外務省見解とも国際社会の圧倒的多数の合意とも反する内容が長期にわたって掲げられていたわけですから、その原因を究明し、誤りを是正する措置(とりわけすべての学校・全教職員への告知)をどのように行うのか、お示しください。

  2. パレスチナの首都をラマッラと書くことも、パレスチナ自治政府の考えとも日本外務省の見解(資料3)とも反しています。①と同様、早急に是正することを求めます。どのような是正措置をとるのかお知らせください。

  3. イスラエルを代表する風景として、イスラエルが併合した東エルサレムにある「岩のドーム」の写真を掲げています。(資料1)この空間にたいしてイスラエル政府が警察権を行使し、軍事的に支配していることは現実ですが、しかしこれを東京都が公式に「イスラエルである」と認めるならば、エルサレムをメッカ、メディナに次ぐ第3の聖地とする全世界のイスラム教徒16億人から強烈な抗議が寄せられるでしょう。イスラエルの風景としては適切ではなく削除すべきだと思いますが、見解をお聞かせください。

  4. オリンピック・パラリンピックは国際的行事であり、それに関連する東京都のオリンピック・パラリンピック教育にも国内外の関心が集まっています。私たちは上述した問題について、都教委は、オリンピック・パラリンピック開催都市の責任において、訂正あるいは見解を社会的・国際的に公表する責任があると思いますが、いかがお考えでしょうか。


オリンピック期間中、しかもなるべく早い時期に都教委が誠意ある姿勢を示すことを求めます。回答を8月3日までに 下記へメールあるいはFAXで送っていただくようお願いします。なおこの質問と回答については、国内外のメディア、及び関係諸機関に公表させていただくことを申し添えます。

       回答送付先 


賛同者 (2021年7月27日現在)別紙








資料1 東京都教育委員会「オリンピック・パラリンピック教育~児童・生徒向けコンテンツ」の中の「大会予定参加国・地域情報」から「イスラエル」のページの一部

(2021年7月25日まで掲載されていたもの)

最下段に記されている注2は、何に対する注か示されていない。

           (7月27日にエルサレム(注2)と変わっていた) 

https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/children-student/watch-learn/europe/israelC:\Users\隆幸\Desktop\パレスチナイスラエル\スクリーンショット 2021-07-27 20.55.44.pngC:\Users\隆幸\Desktop\パレスチナイスラエル\スクリーンショット 2021-07-27 20.53.47.png












資料2東京都教育委員会 「大会予定参加国・地域情報」から「パレスチナ」のページの一部C:\Users\隆幸\Desktop\パレスチナイスラエル\オリパラ資料 パレスチナ1.png











資料3 外務省ホームページより一部

イスラエルの記述より  https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/israel/data.html#section1

   パレスチナの記述より  https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/data.html#section1 

  4~6 略                        4~7 略

イスラエル 7 略史の最後に注が付記されている。


7月22日に開催されたオンライン研究会「パレスチナのちいさないとなみ」閉会のご挨拶で、東京外国語大学の黒木英充先生がご指摘された、東京都教育委員会がオリンピック・パラリンピックについて児童生徒向けの教育コンテンツとして用意したウェブページに「イスラエルの首都はエルサレム」と記載されている問題について、その日のツイッターに「こういう一つ一つを見逃さず、見過ごさず抗議の声をあげることも、私たちにできるひとつのこと」と書きました。

みなさまへも抗議の声を届けることを呼びかけるとともに、自分でも都教委へ送る抗議文を推敲していたところ、22日の登壇者でもあった京都大学の岡真理先生より「都教委への公開質問状を送る」とご連絡をいただき、呼びかけ人の末席に加えていただくことになりました。

そうそうたる「その道の第一人者」のお名前が並ぶなか、どうも「そういう場」に不慣れな私は、ただただ「場違い」な気がして(オンライン研究会のときと同じだ)恐縮してしまうのですが、岡先生が「この質問状の主要な意義のひとつは、広く社会に知らせることで、『エルサレム問題』について社会的関心を惹起すること。一般市民か研究者かなんて関係がない。パレスチナ問題に関心を持ってくださっている一般市民の方々が、この問題を認識し、趣旨にご賛同くださる、あるいは、この問題をとおして、さらにパレスチナ問題や、日本におけるパレスチナ問題の取り上げられ方に関心を持ってもらうということに意味がある(要約です。一字一句先生のお言葉そのものではありません)」と力強く背中を押してくださったので、どんどんみなさまにもご賛同いただきたく、公開します。

ご賛同いただける方は、「皆さま」への前書きの最下部に記された連絡先にご賛同のメールをお送りください。賛同者のお名前もあわせて質問状とともに送ります。(ただし賛同締め切りは本日27日20時まで)

都教委へ送る公開質問状は、さらにその下の線以下のものです。PDFファイルより文章を転載しました。

みなさまのご賛同と、情報の拡散をお願いいたします。(ここまでの文章 高橋)
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皆さま


7月24日、軍学共同反対連絡会ののMLに「オリ・パラ教育で
のパレスチナの扱いについて都教委への公開質問への賛同の要請」をさせていただきました。多くの方々の賛同をいただきました。

皆様の熱い思いを受け止めています。


その中で皆様からいくつか大事なご指摘をいただきました。


そこで呼びかけた私たちで話し合い、ご意見を踏まえて申し入れ
文書の焦点を絞り、簡潔にすることにしました。

申し入れの趣旨は変わりませんが、質問はイスラエルとパレスチ
ナの首都問題に絞り、8項目を4項目にまとめました。

添付した確定版をお読みください。


そのうえでもし賛同を取り消される場合は、27日20時までに
下記へお知らせください。

続けて賛同される方は返信をしていただく必要はありません。


新たに賛同される方も、本日(7月27日)20時までにお名前
と肩書をお知らせください。

そこで賛同受け付けは締め切らせていただきます。


都教委へは明日28日に送付します。


なお24日のメールをお知り合いの方などに転送された方は、お
手数ですがこのメールも転送していただければありがたいです。

呼びかけ人一同

連絡先 小寺隆幸 kodera@tachibana-u.ac.jp




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「東京都オリンピック・パラリンピック教育 」で提示されている  

イスラエルとパレスチナの資料の問題について  

~問題点の指摘と質問~  

2021年7月28日 

東京都教育委員会 教育長 藤田 裕司 殿 

 教育委員 遠藤 勝裕 殿 

山口 香 殿 

秋山 千枝子 殿 

北村 友人 殿 

新井 紀子 殿 

東京都教育庁 指導部 指導企画課 オリンピック・パラリンピック教育担当者殿   

鵜飼 哲(一橋大学名誉教授) 

臼杵 陽(日本女子大学教授) 

岡 真理(京都大学教授) 

栗田 禎子(千葉大学教授) 

黒木 英充(東京外国語大学教授) 

小寺 隆幸(元東京都教員、元京都橘大学教授) 

酒井 啓子(千葉大学教授) 

高橋 美香(写真家) 

長澤 栄治(東京大学名誉教授) 

奈良本 英佑(法政大学名誉教授) 

嶺崎 寛子(成蹊大学准教授) 

様々な意見がある中でオリンピックが始まりました。これに向けて東京都教育委員会(以下、 都教委とします)は、「東京都オリンピック・パラリンピック教育」実施方針(平成 28 年 1 月)を策 定し、都教委傘下のすべての学校に「オリンピック・パラリンピック教育」の実施を指示し、各校 で取り組んできました。 

https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/opedu/static/page/admin-school/pdf/20q1e202.pdf 都教委の「オリンピック・パラリンピック教育 」についても様々な意見がありますが、この取り 組みの目標の(4)として、「多様性を尊重し、共生社会の実現や国際社会の平和と発展に貢 献できる人間」の育成が掲げられています。 

ところが、東京都教育委員会のホームページに設けられている「オリンピック・パラリンピック 教育 」のサイトの「児童 ・生徒向けコンテンツ~大会予定参加国 ・地域情報 」では、「ヨーロッパ |イスラエル国」という表題の下に「首都 エルサレム」と何の注釈もなく記されています。 https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/children-student/watch-learn/europe/israel なお資料1に示すように、「注2」が最後に付されていますが、何に対する注なのかどこにも 書かれていません。外務省のホームページの記述 (資料 3)と対応させると首都エルサレムに

(注1)をつけ忘れたと考えられますが、ミスで済む話ではありません。この数年間、「オリンピッ ク・パラリンピック教育」でこのサイトを見た子どもたちは、エルサレムがイスラエルの首都である という国際的には認められておらず、日本政府・外務省も認めていない虚偽の事実を教えられ ていることになります。 

イスラエル政府は 1980 年にエルサレムを恒久首都と定める「基本法」(憲法に匹敵)を制定 しました。しかしこれは 1967 年の第三次中東戦争で東エルサレムを占領し、さらに併合したう えで首都としたものであり、占領地の併合は明確な国際法違反です。1947 年の国連総会決議 は、エルサレムを「国際管理地区」に指定しました。その後 1967 年の第三次中東戦争に際し、 国連は、停戦後、イスラエルに占領地からの撤退を要求する安保理決議242号を採択し、そ れを今日もなお維持しており、それに基づいて日本政府もエルサレムを首都と認めておりませ ん。また 1993 年の「オスロ合意」は、エルサレムの地位をイスラエルと PLO の交渉事項として います。 

現在、イスラエルと国交のある国のほとんどはテルアビブに大使館を置いており、エルサレム に大使館があるのは、アメリカ合衆国(トランプ政権の 2018 年5月以来)、グアテマラ、コソボ、 ホンジュラスの4か国に限られます。パラグアイはいったんエルサレムに移したものの、新大統 領の選出後直ちにテルアビブに戻しました。エルサレムをイスラエルの首都と認めることは、国 際法と国連安保理決議、さらにはそれらを支える国際社会の圧倒的な合意に反する行為なの です。 

イスラエルの一方的主張をそのまま教えることは、戦争による占領地の武力併合を容認す ることになり、国際法、そして日本国憲法の精神にも反するものです。 

一方上記の「児童 ・生徒向けコンテンツ~大会予定参加国 ・地域情報 」では「アジア|パレ スチナ」という表題の下に「首都 ラマッラ(西岸地区)」とやはり注釈なく記されています。 https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/children-student/watch-learn/asian/palestine しかし、パレスチナ自治政府は基本法でエルサレムを首都と定めていますが、現在はイスラ エルが東エルサレムを占領しているため、パレスチナ自治政府はラマッラにおかれています。日 本政府は「エルサレムの最終的地位については,将来の二国家の首都となることを前提に,交 渉により決定されるべきである」としています。 

(外務省「中東和平についての日本の立場」令和 2 年 3 月 17 日 

 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/middleeast/tachiba.html) 

国際法で認められていないイスラエル政府の主張はそのまま認めてエルサレムを首都と教 え、一方、パレスチナ自治政府の主張は認めず、日本政府 ・外務省の立場とも異なってラマッ ラを首都と教えるということは、公正性と論理的整合性に欠けています。「注2」をつけ忘れた 単純ミスである、また、本来「自治政府所在地」とすべきところを「首都」と教えるのも単純ミスで ある、あるいは子どもにわかるように教育的配慮をしたものである、として済む問題ではありま せん。子どもたちが間違った事実を教えられたという厳然たる結果に都教委は責任を持たねば なりません。 

コロナ禍でのオリンピックの在り方に世界の目が注がれ、とりわけ東京オリンピック・パラリン

ピック競技大会組織委員会自体の人権意識が厳しく問われている今、この問題についても、 開催都市の教育委員会として早急に見解を明らかにし、必要な措置を取る必要があると私た ちは考えます。「共生社会の実現と国際社会の平和と発展に貢献する」人間を育てる教育委 員会として、誠実な対応を取ることで、国際社会の信頼に応えていただきたいと思います。 

《都教委への質問》 

① 外務省見解に反し、都教委がエルサレムを注釈抜きにイスラエルの首都と数年間明記し てきた事実について都教委の見解を明らかにしてください。たとえ「注」の付け忘れという単 純ミスであったとしても、外務省見解とも国際社会の圧倒的多数の合意とも反する内容が 長期にわたって掲げられていたわけですから、その原因を究明し、誤りを是正する措置(と りわけすべての学校・全教職員への告知)をどのように行うのか、お示しください。 

② パレスチナの首都をラマッラと書くことも、パレスチナ自治政府の考えとも日本外務省の見 解(資料3)とも反しています。①と同様、早急に是正することを求めます。どのような是正 措置をとるのかお知らせください。 

③ イスラエルを代表する風景として、イスラエルが併合した東エルサレムにある「岩のドーム」 の写真を掲げています。(資料1)この空間にたいしてイスラエル政府が警察権を行使し、 軍事的に支配していることは現実ですが、しかしこれを東京都が公式に「イスラエルである」 と認めるならば、エルサレムをメッカ、メディナに次ぐ第3の聖地とする全世界のイスラム教 徒 16 億人から強烈な抗議が寄せられるでしょう。イスラエルの風景としては適切ではなく 削除すべきだと思いますが、見解をお聞かせください。 

④ オリンピック・パラリンピックは国際的行事であり、それに関連する東京都のオリンピック・ パラリンピック教育にも国内外の関心が集まっています。私たちは上述した問題について、 都教委は、オリンピック・パラリンピック開催都市の責任において、訂正あるいは見解を社 会的・国際的に公表する責任があると思いますが、いかがお考えでしょうか。 

オリンピック期間中、しかもなるべく早い時期に都教委が誠意ある姿勢を示すことを求めま す。回答を8月5日までに 下記へメールで送っていただくようお願いします。なおこの質問と回 答については、国内外のメディア、及び関係諸機関に公表させていただくことを申し添えます。  回答送付先 

賛同者 (別紙) 




資料1 東京都教育委員会「オリンピック・パラリンピック教育~児童 ・生徒向けコンテンツ」の 中の「大会予定参加国・地域情報」から「イスラエル」のページの一部  

https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/children-student/watch-learn/europe/israel (引用者註 本文にも記したように、最下段に記されている注1は面積の箇所と重 複して記されているが、注2は、何に対する注か示されていない。) 

ヨーロッパ|イスラエル国  

イスラエル国 / Israel エルサレム

面積 日本の面積の約 0.06 倍 2.2 万平方キロメートル(日本の四国程度)(注1)(注1)数字 はイスラエルが併合した東エルサレム及びゴラン高原を含むが,右併合は日本を含め国際的 には承認されていない。 

嘆きの壁 岩のドーム 受胎告知教会 

(注1)数字はイスラエルが併合した東エルサレム及びゴラン高原を含むが,右併合は日本を 含め国際的には承認されていない。 

(注2)日本を含め国際的には認められていない。 

出典:外務省ホームページ 




資料2 「大会予定参加国・地域情報」から「パレスチナ」のページの一部  https://www.o.p.edu.metro.tokyo.jp/children-student/watch-learn/asian/palestine アジア|パレスチナ  

パレスチナ / Palestine ラマッラ(西岸地区) 




資料3 外務省ホームページより  

(引用者註:イスラエルとパレスチナはともに中東に分類されている。) 

イスラエルの記述より https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/israel/data.html#section1 1 面積 2.2 万平方キロメートル(日本の四国程度)(注1) 

3 首都 エルサレム(注2) 

(注1)数字はイスラエルが併合した東エルサレム及びゴラン高原を含むが、右併合は日 本を含め国際社会の大多数には承認されていない。 

(注2)日本を含め国際社会の大多数には認められていない。 

パレスチナの記述より https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/plo/data.html#section1 1 面積 約 6,020 平方キロメートル(西岸地区 5,655 平方キロメートル(三重県と同程度)。 ガザ地区 365 平方キロメートル(福岡市よりやや広い)。) 

3 パレスチナ自治政府所在地 ラマッラ(西岸地区)


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やらなければならないことがヤマのようにあるので、ブログを書くなんてことに時間を費やしている場合ではないと思いながらも、このモヤモヤを流して消してしまうわけにはいかないので、ツイッターという「消えていきやすい」場ではなく、きちんとブログで綴っておこうと思った。

話の発端は、EUの代表と会談した新政権のラピド外相(二年後は首相)が、「イスラエルとパレスチナの二国家案は実行不可能」と語った報道。

ワタシも、とっくの昔にかつてのオスロ合意も二国家案も破たんしているので、もはや実現可能と思っているわけではない。それはさておき、70年以上も収奪、強奪、抑圧、人権侵害、殺害、破壊、住民追放を繰り返し、強大な武力を片手に「合意」を迫り、従わせ、自らはその合意を守ろうともしてこなかった(入植地建設や併合と占領の継続など)側が、それを堂々と言う図々しさに、眩暈がする思いがした。

確かに、イスラエル国内にも自国政府の政策を厳しく問い、批判して、平和と共存のために懸命に活動をしているひとがいる。そのことを忘れるつもりもない。

ただし、その「共存」や「和平」や「合意」は、奪った側がチカラを背景に求めるものでも、迫るものでもあってはならない。奪われた側が抑えつけられながら「のみこまされる」ものに、どんな意味があるというのだろう。

ついワタシは、「和平」「合意」「共存」という「希望ある」言葉に、フラフラとなびき、惑わされ、期待してしまう。でも、奪われた側が、その言葉の裏側に新たな収奪を感じ、権利をないがしろにされると感じ、抵抗し、反発をおぼえるのであれば、その声を丁寧に聞くことでしか、本当の和平などあり得ない。

現地の友達から聞いた話。先日「パレスチナを考える」で話したシェイクジャラのデモに、新たなイスラエル人の参加者が増えた。ネタニヤフ元首相(当時は首相在任中)の汚職の追求と退陣を求めたデモは大きく広がり、それを弾圧する当局への反発は、新たな「デモに参加する層」を生んだ。そういうひとたちがシェイクジャラでの当局の横暴や非道な弾圧に気づき、反対の声をあげ、シェイクジャラのデモは一気に大きくなった。そのこと自体は素晴らしいことだったと思う。

しかし、地元の住民、当事者が参加しづらい状況になってしまった。当事者の声も思いも、「新たに参加する大集団」のなかでかき消されることが増えていった。当事者や地元のひとは、「ただ当局や公権力への反対を叫ぶために、シェイクジャラのデモが利用されている」と感じたのだろう。「一緒には参加したくない」という地元のひとの声も少なくなくなったそうだ。

そして、PAの治安部隊による二ザールさん殺害という事件が起きたとき、地元のひとが「占領反対、家屋破壊や住民追放反対」とともに「PAへの抗議」の声をあげると、イスラエル人の「新たな参加者」のなかから、「PAこそが私たちの和平のパートナー。PA反対を叫ぶな」と地元のひとに怒鳴り散らすという「事件」が起きた。この話を聞いて、いったい、彼らは何重の抑圧にさらされ続けなければならないのだろうと悲しくなった。

それが、冒頭の思考へとつながる。強者(奪った側)がチカラ背景に迫る、自分たちの都合のよい「共存」なんて、奪われた側にしてみれば、違和感しかないのは当然だろうと思う。でもイスラエルが求める「和平」も「合意」もそういうことだ。「良心的な」「和平や共存を求める」人びとのなかにもある、この「奪った側」という自覚のなさが、何重にも奪われた側の心を傷つけ、問題の解決を難しくする一因となっている。

よくイスラエルは「『極右と右派』はいても『中道』はいない」と言われる。冒頭のラピド外相は「中道」とされる。しかし国際法違反の入植地建設に反対しているわけでもない。「入植地の安全の確保」を党の政策として掲げている。

「パレスチナを考える」の最後の質疑応答のまとめ部分で、主催者の高山正樹さんが現政権のことを指して「連立政権だから、そんなにむちゃくちゃなことはできないだろう」(ちょっと正確な言葉は忘れた、こういうニュアンスの言葉)とワタシに投げかけ、ワタシも「劇的に悪くなることはないだろう、良くなることもないだろうけど」(これも正確な言葉は失念、こういうニュアンスの答え)と話した。

しかし、トークのなかでも語ったように、ベイタの入植地建設は、政府未承認のアウトポストから、政府主導の軍事基地と宗教学校の建設というものへと変わるという合意がなされたという報道だし、シェイクジャラやシルワンで今日も破壊と住民追放を繰り返しているのは、この現政権の意向である。

先日、イスラエル国内のパレスチナ人のイスラエル以外の出身である(ガザ地区や西岸地区など)配偶者などへの居住権を認めないとする法律の更新において、その賛成と反対で壮絶なドタバタ政治劇が繰り広げられた。それはさておき、ここで明らかになったのは、現政権の連立を組むアラブ系(パレスチナ人)政党ラアム党が結局連立のための「数合わせ」でしかなかったこと、現政権の主流はアラブ系(パレスチナ人)の利益なんて微塵も考慮していないことが、より一層明らかになったのだった。

それを思うと、「連立政権だから~」という希望は存在しないし、結局いままでと同様にひどいことが続いていく未来しか見えないでいる。でも、ここまできちんと答えられなくて、「劇的に悪くなることはない」などという無責任な言葉を吐いている。

昨夜、シルワンの家屋解体命令が出された一家が「猶予はあと二日」というなかで、家族総出で家の中のものを運び出していた。またどこかで使えるはずの、窓ガラスを丁寧に外し、窓枠まで丁寧に。その姿を観て、たまらない気持ちになった。大切な家を構成する大切なパーツをひとつひとつ運び出す家族の「どうすることもできないやるせなさ」に、たまらなくなった。運び出すことで、破壊を受け入れているわけでも肯定しているわけでもない。ただ、だからといって運び出さないでいれば、家財道具やまだどこかで使える窓ガラスや窓枠ごと壊されてしまうし、なかにひとがいるから待ってくれといって、待ってくれるわけでもないのだから。時間が来れば、キッカリ破壊が開始される。大切なものがなかにあろうが、ひとが居ようが。どうすることもできないのだ。

そして今日も、シルワンで破壊される家を涙をこらえてみつめる男性が、小さな娘を抱きしめながら解体される家の前に佇んでいる映像を観た。ワタシはこのひとの前で「劇的に悪くなることはない」なんて言えただろうか?本当に最低だと思う。最低に無責任な言葉だと思う。人生の思い出が詰まった家を目の前で破壊される男性に、これ以上「劇的に悪い」ことなんてあるだろうか。なんにも分かっていないのは、ワタシ自身だ。

そんなことを記録して残しておきたくて、PCの前でまた一時間半も費やした。

(写真は、シルワンの家屋破壊された後の現場。初めてここに行ってみた2009年の写真)
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上記のトーク「パレスチナを考える」アーカイブ視聴はこれからのお申し込みも可能です。

・電話で
03-3489-2246(M.A.P.)
「高橋美香と『パレスチナを考える』アーカイブ視聴希望」とお伝えください

・メールで
多摩住民自治研究所
tamajitiken1972★http://space.ocn.ne.jp(★を@に)
「高橋美香と『パレスチナを考える』」アーカイブ視聴希望」と件名にご記入ください

いずれの場合も、視聴の方法を担当者がご返答いたします。

詳細は主催者のブログをご一読ください。
パレスチナを考えよう! | M.A.P.after5 (fc2.com)

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また、7月22日には下記のとおりオンライン研究会「パレスチナのちいさないとなみ」に登壇します。

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7月22日(木・祝)にZoomを使ったオンライン研究会「パレスチナのちいさないとなみー写真と文学・映画から」に、岡真理先生とともに登壇します。

ご参加には、下記の登録フォームより、事前の登録が必要です。
2021年7月22日パレスチナのちいさないとなみ (google.com)

詳細は下記のとおり、研究会のページより転載します。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

占領下のガザに対するイスラエルの大規模軍事攻撃は、5月21日に停戦となりました。ガザへの空爆が停止しても、根本的な問題は何一つ解決されていません。1948年に占領されたイスラエル領、1967年に占領された東エルサレム、西岸、ガザ地区では、ユダヤ人至上主義のアパルトヘイトと現在進行形の民族浄化のもとで、パレスチナ人は対等な人間性と自由を否定されています。しかし、占領による日常的な構造的暴力は、主流メディアではほとんど報道されません。
 また、報道されるガザの攻撃であっても、犠牲になった人々は「数」でしか表されません。でもその一人一人に人生があり、大事な人がいて、大切な営みがそこにありました。顔の見える一人一人として、パレスチナの人たちのことを考えるためのきっかけになればと、研究会を企画しました。パレスチナに暮らす人々の日々の暮らしとその息吹を、写真と文学・映画の力を借りて届けます。
 どなたでもご参加いただけます。ぜひふるってご参加ください。

日時:2021年7月22日(祝・木)19:00~21:00
会場:Zoomを用いたオンライン開催

◇司会:
 嶺崎 寛子(成蹊大学)
◇語り手:
 岡 真理(京都大学)
 「パレスチナの人々―文学と映画から」
 高橋 美香(写真家)
 「パレスチナのちいさないとなみ―写真から」

【登壇者紹介】
◆岡 真理(京都大学)
 現代アラブ文学、パレスチナ問題、第三世界フェミニズムを専門とする。著書に『ガザに地下鉄が走る日』(2018、みすず書房)『アラブ、祈りとしての文学』(2015年、みすず書房)『記憶・物語』(2000年、岩波書店)など。
◆高橋 美香(写真家)
 パレスチナに通い、パレスチナの人々と生活を共にし、人々の暮らしを写真とエッセイで伝える。著書に『パレスチナのちいさないとなみ』(皆川万葉と共著、2019、かもがわ出版)、『それでもパレスチナに木を植える』(2016、未来社)、『パレスチナ・そこにある日常』(2010、未来社)など。

【参加方法】
 ご参加希望の方は登録フォームまたはポスター内のQRコードよりお申し込みください。

【共催】
 ・科研費基盤研究(A)「イスラーム・ジェンダー学と現代的課題に関する応用的・実践的研究」グループ研究「ポスト紛争後の修復的正義とジェンダー」
 ・科研費学術変革領域研究(A)「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築」A03「移民・難民とコミュニティ形成」班  https://connectivity.aa-ken.jp/
 ・科研費基盤研究(A)「トランスナショナル時代の人間と「祖国」の関係性をめぐる人文学的、領域横断的研究」
【問い合わせ先】
 イスラーム・ジェンダー学科研事務局( office@islam-gender.jp )

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どちらも、ご視聴申し込み、ご参加をお待ちしております。

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もう気が付けばあと十日ほどになってしまいましたが、7月22日(木・祝)にZoomを使ったオンライン研究会「パレスチナのちいさないとなみー写真と文学・映画から」に、岡真理先生とともに登壇します。

ご参加には、下記の登録フォームより、事前の登録が必要です。
2021年7月22日パレスチナのちいさないとなみ (google.com)

詳細は下記のとおり、研究会のページより転載します。


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占領下のガザに対するイスラエルの大規模軍事攻撃は、5月21日に停戦となりました。ガザへの空爆が停止しても、根本的な問題は何一つ解決されていません。1948年に占領されたイスラエル領、1967年に占領された東エルサレム、西岸、ガザ地区では、ユダヤ人至上主義のアパルトヘイトと現在進行形の民族浄化のもとで、パレスチナ人は対等な人間性と自由を否定されています。しかし、占領による日常的な構造的暴力は、主流メディアではほとんど報道されません。
 また、報道されるガザの攻撃であっても、犠牲になった人々は「数」でしか表されません。でもその一人一人に人生があり、大事な人がいて、大切な営みがそこにありました。顔の見える一人一人として、パレスチナの人たちのことを考えるためのきっかけになればと、研究会を企画しました。パレスチナに暮らす人々の日々の暮らしとその息吹を、写真と文学・映画の力を借りて届けます。
 どなたでもご参加いただけます。ぜひふるってご参加ください。

日時:2021年7月22日(祝・木)19:00~21:00
会場:Zoomを用いたオンライン開催

◇司会:
 嶺崎 寛子(成蹊大学)
◇語り手:
 岡 真理(京都大学)
 「パレスチナの人々―文学と映画から」
 高橋 美香(写真家)
 「パレスチナのちいさないとなみ―写真から」

【登壇者紹介】
◆岡 真理(京都大学)
 現代アラブ文学、パレスチナ問題、第三世界フェミニズムを専門とする。著書に『ガザに地下鉄が走る日』(2018、みすず書房)『アラブ、祈りとしての文学』(2015年、みすず書房)『記憶・物語』(2000年、岩波書店)など。
◆高橋 美香(写真家)
 パレスチナに通い、パレスチナの人々と生活を共にし、人々の暮らしを写真とエッセイで伝える。著書に『パレスチナのちいさないとなみ』(皆川万葉と共著、2019、かもがわ出版)、『それでもパレスチナに木を植える』(2016、未来社)、『パレスチナ・そこにある日常』(2010、未来社)など。

【参加方法】
 ご参加希望の方は登録フォームまたはポスター内のQRコードよりお申し込みください。

【共催】
 ・科研費基盤研究(A)「イスラーム・ジェンダー学と現代的課題に関する応用的・実践的研究」グループ研究「ポスト紛争後の修復的正義とジェンダー」
 ・科研費学術変革領域研究(A)「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築」A03「移民・難民とコミュニティ形成」班  https://connectivity.aa-ken.jp/
 ・科研費基盤研究(A)「トランスナショナル時代の人間と「祖国」の関係性をめぐる人文学的、領域横断的研究」
【問い合わせ先】
 イスラーム・ジェンダー学科研事務局( office@islam-gender.jp )

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実は、当日司会を務める成蹊大学の嶺崎寛子先生は、遠き昔の「エジプト留学生仲間」なのです。寛子さんは、当時よりメッチャ勉強されていて、同じ「留学生」なんて言葉ではくくれないんですけど。ウラマー(イスラーム法学者)の見解が示されたファトワー集を懸命にエジプト人の先生と読み解き、研究されていた姿が忘れられません。私はそのあいだ、スーフィダンスに夢中になり、スーフィダンサーと親しく付き合い、その撮影に夢中な日々でした。ああ、遠い青春。

そんな背景はともかくとして、第一線でご活躍される先生方の研究会のなかで、いったい自分のような野良フリーランサーに語るべきことがあるのだろうか?と、最初は躊躇して完全に腰が引けていましたが、「一般の方々に向けた発信」とのお言葉を聞くにつれ、お引き受けする気持ちになった次第です。

みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

当日は、先日のイベント「パレスチナを考える」ではあまり触れることのできなかった、難民キャンプの家族のお話をするつもりです。まさに「ちいさないとなみ」のお話を。

私の話はともかく、岡先生のお話は必聴です。多分、私が一番、先生のお話を聞くことを楽しみにしています。

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昨日オンライントークイベントにご参加いただいた皆様、またアーカイブ視聴にお申し込みいただいた皆様、本当にありがとうございました。

アーカイブ視聴は、ご用意が整い次第すべての(当日ご参加の方も含む)みなさまに、主催者からお知らせのメールをお送りします。もう少しお待ちください。

これからのお申し込みも可能です。
・電話で
03-3489-2246(M.A.P.)
「高橋美香と『パレスチナを考える』アーカイブ視聴希望」とお伝えください

・メールで
多摩住民自治研究所
tamajitiken1972★http://space.ocn.ne.jp(★を@に)
「高橋美香と『パレスチナを考える』」アーカイブ視聴希望」と件名にご記入ください

いずれの場合も、視聴の方法を担当者がご返答いたします。

詳細は主催者のブログをご一読ください。
パレスチナを考えよう! | M.A.P.after5 (fc2.com)

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さてさて、昨日は、

1・はじめに(地図を用いて)
2・東エルサレム(シェイクジャラ、シルワンの現状と背景や居住権のこと)
3・入植地(ベイタの現状とビリンの例)
4・難民キャンプ(ジェニン難民キャンプの一家の「落穂ひろい」)
5・オサマさんのこと(十条ビサンのスドキさんのお兄さんが殺された)
6・さいごに

と大枠を決めて臨んだトークでしたが、考えて準備しているあいだにも、目まぐるしく日々入植者の襲撃や破壊や占領軍による暴力と殺害やPAによる批判者の弾圧などが起こり続けている(そして、「停戦」後の現在、それらが日本で「報道」されることは滅多にない)なかで、あれも話したい、これも伝えたい、でも名前も顔も見える話を…などと考えすぎて、詰め込みすぎて、ひとつのトークとしては「こなれていない」まとまりの欠いたものになってしまい、申し訳ありませんでした。反省点ばかりです。ひとつひとつ振り返り、ブラッシュアップして、またの機会に活かします。

(昨日のトークでは、昨今現地に自分が行くこともできていない現状ゆえに、多くの画像を借用しました。そのつど出典を口頭で示したつもりでしたが、モレがあったかもしれません。地図の多くは国連OCHA oPt(人道問題調整事務所)Humanitarian Atlasより借用しました。ベイタの入植者とアウトポストの写真はアルクドゥス ニュース ネットワークより借用しました。また東エルサレムのシェイクジャラの写真は現地在住の美恵子ガリコさんよりお送りいただきました。ありがとうございました)

時間がなくて、断念せざるを得なかった6番の「さいごに」の部分で、本当はいま一番伝えたかったことのひとつ、ガダンファルさんのハンストのこと。(写真はパレスタインオンラインより借用)

トークを組み立てるにあたり、写真を用意した日にはハンスト57日目だった(上記の写真)ガダンファルさんは、本日ハンスト61日目になる。

先々週の土曜日に、十条のパレスチナ料理店ビサン(5番のお話の殺されたオサマさんの弟さんのお店)に行く直前、電車の中でハンスト52日目のガダンファルさんが、彼の身を案じるご家族に「強い心を持って」と語る姿を見て気持ちがプツンと切れて、京浜東北線のなかで涙が止まらなくなってしまったのだった。

彼のような、「罪状」も勾留期間も示されず、裁判もない(つまり、裁判で起訴・有罪にできるような確固たる「罪状」を軍検察も用意できないので裁判にかけることもできない)まま、いつ終わるともわからない「行政拘禁(行政勾留)」をされているパレスチナ人はたくさんいる。裁判で闘うこともできないので、彼らに唯一残された「闘いの方法」は自らの命と引き換えに、身を削って、命をすり減らして解放を訴えるハンガーストライキ。しばしば、彼らのハンストは長期に及び、命が危ぶまれている。

それでも、自由と尊厳ある生を勝ち取るために彼らは命を懸ける。自分のためだけではないはずだ。自分の命を懸けて、世にこの不条理を問うている。そのことに、どうかひとりでも多くの方に目を向けてもらい、このような不当な勾留を終わらせるために、世界中の目が「確かに見ている」ということを、占領者に知らしめてほしいと願う。

ガダンファルさんは、これまで水と塩分は摂取するが食べ物は摂らないというハンガーストライキを決行していたが、解放を要求してさらに「水までも絶つ」という決断をされた。このままでは、確実に命のともしびが消えてしまう。

昨日、彼が公開した全世界のみんなに充てた公開書簡を記しておく。(英語訳からの意訳)
誤訳、意味の取り違えがある場合はお許しください(アラビア語の書簡は未読)

**************

全世界の自由の身であるみなさんへ
パレスチナの老若男女すべてのみんなへ
パレスチナの大統領と政治的リーダーへ
人権団体と国際組織のみなさんへ
イスラーム諸国、ムスリム兄弟姉妹のみなさんへ

私の命は私の目の前から消え去ろうとしています
私は健康を失い、私の身体は私に背こうとしています
占領者はカプラン医療センター※で私に緩慢な死を科しています
私の人生を救って!
それゆえに、私はハンガーストライキだけでなく水の摂取のストライキを宣言します
すべてを神に委ねます

あなたの息子であり、弟であるハンガーストライキ決行者であり
「殉教者」となる
ガダンファル・アブー アトワン

2021年7月4日

※カプラン医療センターはハンガーストライキを決行し、著しく健康状態の悪化したガダンファルさんを「死なせないため」(「殉教者」となられては都合が悪い)に軍刑務所(または拘置所、すみません、それ以前の身柄がどこにとどめられていたのか未確認)から移送収容した医療センター。身柄は自由ではない。あくまでも拘束下にある。昨日は、当局により強制給餌(という言葉で合っているんでしょうか?)が始まるのではないかとの報も出ていたが、本人の意に反した強制給餌はいうまでもなく拷問・暴行の一種。

******************

こんな現実の一端も、どうか「報道もされない」現実として心に留め置いてもらえますように。

そして、この不条理に、一緒に「おかしい」と声をあげてくださる方が、ひとりでも増えますように。

私にも、何ができるわけでもありません。でも「見ている」ことを示すことは「無」ではないと信じたいです。

いまこの瞬間にも懸命に闘っている、ガダンファルさんをはじめとするハンストを続ける人びとの身柄の解放を願います。彼らに自由を。彼らに彼らの人生を返せ。

父親や親友や幼なじみのいくつもの死をみつめながら生きてきた、「すべてを我慢して、飲みこんで生きながらえることだけが「生きる」ということではない」と語った難民キャンプの弟たちの言葉を思い出します。

★追記★
ガダンファルさんの身柄の解放を求めてイスラエルの最高裁に提出する署名サイトが立ち上がっていました。
キャンペーン · Israeli Supreme Court: Free Ghadanfar Abu Atwan · Change.org

ご賛同いただける方は、ぜひとも署名をお願いいたします。

これも「いま、私たちにできること」のひとつではないかと思います。たとえ微力ではあっても。

ガダンファルさんは、ヘブロン郊外のドゥーラ(先日PA治安部隊に殺された二ザールさんと同郷ではないだろうか)ご出身。昨年10月にイスラエル軍によって身柄を拘束されて6か月の行政拘禁が科され、その期限が切れる5月にさらに6か月勾留が延長され、ハンストを決行。

5月以降、200以上の行政拘禁命令が出されていて、現在500名以上の方が同様に行政拘禁により勾留されている。

ガダンファルさんは、19歳当時以来4回、計7年(現在28歳なので、19歳から現在までほとんどの期間を収監されて過ごしていたことになる)を収監されて過ごしている。このうち、3回、約5年がこのように裁判もなく勾留される行政拘禁での勾留とのこと。
(samidoun palestinian prisoner solidarity networkより)

★7月9日再追記★
日本時間で深夜(現地時間ではまだ8日の夕刻)に、ハンスト65日目にして、拘束を解かれて身柄を
解放されるという勝利を勝ち取ったとの報が流れました。私の発信を目にして178名の方が身柄開放
要求のご署名をしてくださったとのこと、ご協力くださった皆様本当にありがとうございました。

しかし、これで終わりではありません。同様に不当に身柄を勾留される方々は500名もいらっしゃるとのことです。ガダンファルさんの不屈の闘志を称えつつも、様々な事情から、そのような闘いに身を投じることもできないまま、拘束され続けているひとの「闘い」や、そのお気持ちを思います。

行政拘禁により、裁判もなく不当に勾留されるすべての方々の解放を願いつつ、これからも注視したいと思います。

+++++++++++++++++++++++++++++++++
また次もオンラインでのトークが続きます。
次回は、京都大学の岡真理先生と登壇して、岡先生が文学と映画から私が写真からパレスチナのお話をします。

どなたでもご参加可能です(要事前申し込み)

★7月22日(木・祝)19時から21時
オンライン研究会「パレスチナのちいさないとなみ」ー写真と文学・映画から

詳細は
オンライン研究会「パレスチナのちいさないとなみ―写真と文学・映画から」 | 科研費基盤研究(A):イスラーム・ジェンダー学と現代的課題に関する応用的・実践的研究 (islam-gender.jp)

みなさまのご参加をお待ちしております。

こちらでは、昨日ほとんど話せなかった難民キャンプの人びとのお話(基本的には、先日のカンパによるスライドトーク視聴「難民キャンプに生きる」と類似の内容で短縮版)をする予定です。


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