世界の笑顔に出会いたい

写真家・高橋美香のブログ。 公園にいたノラ猫のシロと暮らす。 カメラを片手に世界を歩き、人びとの「いとなみ」を撮影。 著作に『パレスチナ・そこにある日常』『それでもパレスチナに木を植える』(未來社)『パレスチナのちいさないとなみ』(共著、かもがわ出版) 写真集に『Bokra 明日、パレスチナで』(ビーナイス)

カテゴリ: viva viva CUBA

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もう一年経とうとしているんだなあ、キューバ再訪から。

ここ数年ずっとアフガニスタンとエジプトとパレスチナをぐるぐるしているワタシには、お気楽極楽な純粋に「楽しむ旅」ってのはキューバが久々だった。エジプトもかつてはそういう場所だったけど、自分にとって。

この写真は、旅の最終日に時間があったので海の方へ散歩に行って、ビーチでも何でもない磯場で地元の子どもたちが泳いで遊んでいるところをぼーっと眺めていたところ、「名前なんて言うの?」「中国人?」っていろいろ聞かれて、写真撮ってって言われて…という、お約束のパターンで撮ったもの。

問題が何もないわけじゃないんだけど、キューバってホントにみんないまを楽しんでいて、いまを一生懸命生きていて、先のことばっかり考えて満たされないでしかめっ面している多くの日本人とは対極で。もちろん、自分もそんなひとりだけど。なんか、自然と笑っちゃうんだよね。

スコールで何時間も広場の屋根のある場所で、やることもなく雨がやむのを待つのも、何時間もなかなか来ないバスを待つのも、「まあ、そんなもんか」って、自然と笑っちゃう。

旅に出たいなあ。何も考えず、気楽な旅に出たい。

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久しぶりにキューバのはなし。

フィデルが共産党大会で何時間、時には何十時間にも及ぶ演説をおこなってきた革命広場。そこには、チェ・ゲバラの肖像が内務省の壁に描かれている。「永遠の勝利まで」という彼の言葉とともに。

そして、大学生のときにはなかったものが、十数年のあいだに登場していた。それは、ゲバラとともにキューバ革命を闘った英雄カミーロ・シエンフエゴスの肖像。内務省と隣り合う情報通信省に「いいだろ、フィデル」という言葉とともに描かれている。

このふたつを上から眺めようと、ホセ・マルティ記念博物館にある展望台にのぼってみた。

印象的だったのは、燃料不足か高級ホテル以外はほとんどどこもクーラーなど効いていないハバナ市内。それが、ホセ・マルティ記念博物館は冷えていたということ。キューバ国民には、こういう施設は無料もしくは激安の入場料なので、多くの子どもたちが見学に来ている。

展望台には、日本のそれのようにゆったりしたくつろぎスペースやベンチなどが置いてあるわけではないので、長時間は過ごしにくい。東西南北それぞれのスペースに、ひと一人か二人がようやく眺められるような曇ったガラス越しに、階下の景色を見渡す。

とはいえ、このタワーはハバナっこの誇り。独立戦争の英雄ホセ・マルティが、じっとハバナっこをみつめている。

ここから夕焼けとか眺めたらキレイだっただろうなあ。

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ハバナの旧市街が好きで、13年ぶりの旅でも毎日のように旧市街をひたすら歩いた。

暑さの種類が日本とは違うとはいえ、ハバナの夏も暑い。強烈な日差しが照りつける。水分補給のために、店を見つけては飲み物を買う。

印象深いご夫妻がいる。とても明るくて饒舌な奥さんと、無口ではにかみやな旦那さん。毎日このご夫妻はキャピトリオ(国会議事堂)の前で、飲み物を売っている。

ある日、奥さんの方に「一緒にいる人旦那さん?」と聞いてみると「そうよ」と返事。「よかったら二人一緒の写真を撮らせてよ」というとOKの返事。

そのときの写真がこの写真。すごく印象に残っているひと。

汗を拭きながら懸命に働らくひとの笑顔が好きだ。そんな笑顔に出会うために旅をしてるんだなあと思う。いつかまた、もう一度会えるといいな。

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キューバに行った日々が遠い遠い昔のことのようだ。たった半年前とはとても思えないほど、記憶が遠のきつつある。全然キューバの話を書いてないよなあ。

最近、仕事で忙しいので全然PCを開いてじっくり何かを書く余裕をなくしている。通勤や休憩時間の暇つぶしにと思って買ったタブレットのネクサス7で短文を書き込むくらいのもの。だってタブレットって文字を入力しにくいんだもん。ワタシからの誤字や未変換の読みにくいメールが届いた皆さん、そういうわけなのでお許しを。

今日は六時間しか働かなかったので、やはり時間に余裕がある。余裕のある生活っていいね。時間に追われてばかりの日々。

さて本題。

この日、ハバナ郊外の動物園に行こうと、ホテルの兄ちゃんに頼んで車を呼んでもらった。パルケレーニンという広大な森の公園に隣接してあるらしい。場所はよく知らないまま、ロンプラの情報を頼りにドライバーの兄ちゃんに車を走らせてもらう。気が付けば、舗装された道から遠く外れ、のんびりした田舎風情の景色のなかを車は爆走。到着してみたら、開園時間までにまだまだ時間があり、特にメジャーな観光地というわけでもない、こんな場所に現れた外国人に、みんなの目は注がれる。

キューバ人って、正直者で親切な人が多いと思う。もちろん、どんな国にもちょっと悪い奴、こずるい奴は存在するけれど、それでも総じて正直者が多いのがキューバの印象。たとえば、開園の窓口並びとか、バスに乗る順番とか、みんな「我先に」と窓口に殺到するくせに、みんなの迫力に圧倒されて次のバスなどを待とうとすると、誰からともなく「あのチーナ(中国人の意味。日本人じゃなくて中国人だと思われている)の方が先に待ってたんだから入れてやれよ」と、必ず声をかけてくれる。座席に座るとき、列に並ぶとき、必ずなのだ。

ところで、動物園の開園まで時間があったので、動物園の近辺を散歩していた。ハバナの都会のなかとは全然違う光景で、一面畑が広がっている。何が植えてあるんだろうなあと畑に近づくと、農作業をしていたおっちゃんが手を止めて近づいてきた。

「こんなところに外国人が来るなんて珍しいな。中国人か?」
「いや、日本人の旅行者。ここでなにをつくってるの?」
「いろんな野菜をつくってるぞ。そうだ、いまちょうどグアバを収穫しようとしているところだから、ちょっと待ってろ。いま採ってきてやるから」

しばらく待っていると、おっちゃんが手にグアバを抱えて戻ってきた。

「ほら、持っていきな。暑いからこれでも食べて、水分とって」
「もらうわけにはいかないよ。苦労してつくったものだもん。お代は?」
「そんなのただに決まってるだろ。いい旅をな」

おっちゃんにお礼を言って動物園に戻った。

おっちゃんからもらったグアバは、ちょっと青くさかった。

ただそれだけの話。でもキューバってやっぱりいいなと思ったひとときの話。

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カルナバル(カーニバル)最終日の夕方、ハバナの目抜き通り海沿いのマレコン通りはすごい人出だった。ワタシの旅も最終夜、ずっと夜は雨続きで一度ホテルに帰ると新市街や旧市街まで出ていくことが億劫になっていて、この夜までカルナバルを見逃していた。今日こそは!と、気合を入れてカルナバルが始まるのを待つ。

ハバナの人は、工夫したおしゃれをする人が多い。個性的。決して余裕のある暮らしではないと思うが、あちこちの市場や古着マーケットなどをまわって、おしゃれを楽しんでいる。ハバナの中心部には、店舗を構えた服屋さんもあるが、それは、驚くほど高い。誰がこんなの買えるんだろーと驚くが、外貨にアクセスできる層が確実にいるらしく、アディダスやプーマなどのショップには、ひとがあふれていた。冷やかしだけの人もいるだろうけど。

出会ったハバナっこは、総じて、品物不足や「豊かな」欧米へのあこがれなどに、キューバの現在への不満を口にするけれど、それでも、いま目の前のことを楽しむということに長けていた。カルナバルを待つ人たちも、そんな雰囲気に満ちていた。

マレコン通りを歩いていると、ふたりの若者に「どこから来たの?」と声をかけられた。しばらく話していると、カバンからウィスキーを取だし、「一緒に飲みながらカルナバルを待とう!」と誘われた。他意は感じられなかったので、しばらくウィスキーをラッパ飲みしながら、いろいろと話した。

じっとしているのも飽きてきたので、街を歩くといって彼らに別れを告げると、口々に「ハバナの夜を楽しんで!」「カルナバルを楽しんで」と手を振ってくれた。

すっかり季節も変わり、ハバナでの日々が遠い昔のことのようだ。

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