世界の笑顔に出会いたい

写真家・高橋美香のブログ。 公園にいたノラ猫のシロと暮らす。 カメラを片手に世界を歩き、人びとの「いとなみ」を撮影。 著作に『パレスチナ・そこにある日常』『それでもパレスチナに木を植える』(未來社)『パレスチナのちいさないとなみ』(共著、かもがわ出版) 写真集に『Bokra 明日、パレスチナで』(ビーナイス)

カテゴリ: ノラ猫のシロとの日々

昨日、見頃を過ぎた桜にも散りゆく独特の美しさがあると書いた。それをカメラを片手に探す夕刻が自然と向き合い、自分自身と向き合う貴重なひとときとなった。今日は、そんな昨日のひとときの写真などを。

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桜を窓から眺めるシロ。この冬も無事に(とひとことで書くには、何度か体調悪化のちいさな危機はあったものの)大病することなく乗り切れて、春を迎えることができた。シロはノラ猫のころ、またはノラ猫にされる前(つまり公園に棄てられる前)、どんな景色を眺めていたのだろう。舞い散る桜の花びらを振り払ったり、追いかけたりもしたのだろうか?

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花が散り、真っ赤になった花の中心部が「役目を終えた」とばかりに、きれいな花びらをまとうのをやめて風に揺られている。その姿が妙に美しく感じられる。はなびらをまとっていたときには、色も真っ赤ではなかったし、こんなに存在感なかったな。
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曇り空の夕暮れに、花びらのはかない白さが浮かび上がる。太陽の光を受けて輝いているときと、なんと表情を変えることか。

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緑の葉が出てきている。もうすぐ緑がいっぱいの季節になる。人間はどれだけ愚かなことを繰り返していても、自然は移ろい、季節は巡る。

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窓から夜桜を眺めるのも、今年もそろそろ終わりだね。シロも堪能したかい?

「おいらは桜より、ちゅーるのほうがいいけどね」(シロ)

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「おやすみにゃさい」(シロ)

シロは、震災以来通い続けている三陸宮古でお世話になっている方から送られてきた魚が詰められた発泡スチロールの箱で作った寝床がずっとお気に入り。ノラ猫から我が家の子として迎え入れるとき、間に合わせで用意した箱なのに、三年半ずっと使っているよ。

このなにげない日常が今日も守られていることに感謝して。そして、その日常が奪われている世界中のひとたちのことを思いながら。

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2019年、フェアトレードでパレスチナからオリーブオイルやザアタル、石鹸、刺繍製品を輸入販売するパレスチナ・オリーブ代表の皆川万葉さんと共著『パレスチナのちいさないとなみ』(かもがわ出版)を出版しました。パレスチナの「おしごと」をテーマにした一冊です。お近くの書店でお取り寄せが可能です。

パレスチナ・オリーブのサイト
http://paleoli.org/

読後のご感想もお寄せいただければ幸いです。
ネット上でのご投稿やご感想、レビューなどには #パレスチナのちいさないとなみ をつけてご投稿ください。

もちろん、本に挿しはさまれたハガキや、版元ページのご感想記入欄でも。

ネットでは、下記のリンク先などでご購入いただけます。

★『パレスチナのちいさないとなみ』
版元のかもがわ出版のページ
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ha/1026.html


アマゾンのページ
https://www.amazon.co.jp/s?k=%E3%83%91%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%8A%E3%81%AE%E3%81%A1%E3%81%84%E3%81%95%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%BF&__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&ref=nb_sb_noss_2


★過去の著作★

★『それでもパレスチナに木を植える』(未來社)
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624411022
 
アマゾン
http://amzn.asia/bUm0U7i 


★『パレスチナ・そこにある日常』(未来社) 
版元の未來社のページ
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624410919

アマゾン
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%83p%83%8C%83X%83%60%83i%81E%82%BB%82%B1%82%C9%82%A0%82%E9%93%FA%8F%ED&x=10&y=21


上記の書籍、およびクルドのおかあさんのオヤのネックレスなどを、引き続き二月末まで写真展を開催してくださった古書ほうろうさんにてお取り扱いいただいております。同店のオンラインストアでも購入可能です。
https://koshohoro.stores.jp/

一月から二月の写真展「パレスチナの人びと」について
https://horo.bz/event/takahashimika20210113-0228/


★写真集『ボクラ・明日、パレスチナで』(ビーナイス)

http://www.amazon.co.jp/ボクラ(Bokra)%E3%80%80明日、パレスチナで-ビーナイスのアートブックシリーズ-高橋-美香/dp/4905389275/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1421878540&sr=8-2&keywords=ボクラ%E3%80%80明日

版元ビーナイスのページ
https://benice-books.stores.jp/items/5e8ec7102a9a42515415e38b

http://benice.co.jp/index.html


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「世界ねこの日」でパレスチナのねこを紹介したら、今度は我が家のシロの近況を紹介したくなった。

公園でシロと出会って一年が経とうとしている。

昨日、ずっと公園でシロにご飯をあげて命をつないでくれていたおじさん1(夕方担当)とおじさん2(朝担当)のおふたりがそろって公園にいらっしゃったので、シロの近況をご報告。毎朝ワタシの布団の横でウトウトしながら待ちかまえ、ワタシが起きる気配を感じるや否や隣に横になり、顎を差し出してきて「かいてかいて」とばかりに甘えるシロの様子を撮った写真を見せると「いやはや、感慨深い!」とおふたり。

保護、というより捕獲してからの一か月は壮絶だった。ブログにも一度記したことがある。人間の記憶というのは不思議なもので、あれだけ大変だった日々のことは、すっかり忘却の彼方。具体的な詳細を思い出すこともない。それでも、「しんどかったなあ」という思いは残る。もう一度あの経験を繰り返せるか?と聞かれたら間違いなく「ノー」だ。あの大変さを知らなかったからこそ、シロをうちの子にするという途方もない計画を実行したのだと思う。知っていたら絶対にできなかった。

パレスチナから帰ってきてからの日々は、行く前に少しずつ縮めた距離の縮めなおし。まったくワタシには懐かず、ワタシが不在のあいだにひとりでシロの面倒を見てくれたパートナーにだけ寄せる信頼と親愛の情。「シロが幸せならそれでいいんだよ」と、物わかりの良い自分を演じながら、寂しさとやりきれなさが押し寄せる。

そして5月、アフガニスタンに行ってから帰ってきたあとかな、劇的にシロが甘えてくれるようになった。「おい、またどこに行ってたんだよー」とばかりに。今度は旅程が短かったせいか、忘れられることもなかった。

それからは、シロはのんびり「うちの子」として暮らしている。まだまだ警戒心にスイッチが入り、子猫のころから飼い猫である子のようにはいかないこともたくさんあるけれど、ワタシたちは、シロの気持ちやシロのペースを尊重するように心がけるのみだ。

毎日、シロのいろんな表情を撮ることが楽しみ。毎朝、シロが至近距離で隣に横になり、吐息を感じながらその毛と体に手を差し伸べるとき、その感触、感覚のすべてで幸せだと思う。

雨の日、台風の日、嵐の日、シロは大丈夫かとただただ案じるしかなかった去年の今ごろのことを思うと、シロが手を伸ばせば届く距離にいてくれることがかけがえのないことだと感じる。

保護(捕獲)して、連れて行った病院でFIV(猫エイズ)キャリアだと診断されて、覚悟はしていたのに、思わず涙がこぼれた午後を忘れない。どうか発症しないでいつまでも元気で健やかに過ごしてほしい。

シロを幸せにしたい。シロとともに幸せでありたい。そんな「世界ねこの日」。

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いま、真後ろでシロが毛づくろいしている。ワタシはその気配を感じながら、PCに向かう。明日からパレスチナへと旅立つので、落ち着かない気持ちのまま夜を過ごしている。

不在になる前にシロが落ち着いてくれてよかったと胸をなでおろしている。正月明け6日くらいからどんどん落ち着きを取り戻したシロ。それまで一か月近く夜になると一晩中ウロウロ、夜鳴きを繰り返していたのに、すっかり静かになった。ご飯をよく食べ、よく眠っている。ワタシたちにも少しずつ甘えてくるようになった。

最近では、すっかり、まるで昔からうちの子だったかのような顔をして、お気に入りの場所のいくつかでくつろいでいる。そんなシロの姿を見られるようになったことが本当にうれしい。いままで捨てられて、ノラ猫になって、厳しい日々を過ごしてきた分、安心して穏やかな日々を過ごしてほしい。なにがシロの幸せなのかはわからないが、精一杯幸せにしてあげたい。少なくとも、その努力はしたい。

出発前に、オリーブの苗木カンパをありがとうございました。また「なにに使ってくれてもいいよ。判断は任せる」との声も多く、「パレスチナのためというより、あなた自身のため、それが結果的にパレスチナの誰かのためになるのでもいいから、自由に使って」というカンパも多く寄せられ、本当に心から感謝しております。ありがとうございます。使途については、帰国後に報告いたします。

なにがどうなるかは、行ってみないとわからないけれど、とにもかくにも行ってきます。

シロ、いい子でお留守番していてね。

帰ったら「あんた誰?」って顔をされるんだろうな。。。

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シロが我が家にやってきて25日が経った。公園で寒さに震えていたシロ、でもその一方お日さまが顔を出している暖かい時間には悠々と公園のフェンスの上をご機嫌顔で歩いていたシロ、いろんな姿を思い出す。

うちに来てからのシロは、残念ながらまだ「適応」には程遠い状態で、目を覚ましているあいだは、かわいそうに不安げな顔をしていることも多い。暖かい部屋でウトウトしている姿、安心して眠っている姿を見るとホッとする。シロにも少しは心安らぐ時間があるようで。ワタシはまだ、シロをノラ猫ではない状態にしたことに、心から満足はできていない。シロが我が家を「僕の家」と認めてくれるまで、この葛藤はずっと続くのだろう。自分のエゴでシロを保護したことを、罪のように感じてしまう自分がいる。シロが夜な夜な「外に出してくれー」と歩き回り、鳴き騒ぐ長い夜は、特にそう思う。

でも、この葛藤は、むしろ忘れてはいけない気持ちなのだろうと思う。眠れない夜を過ごすこの苦しみも、どうしてあげることもできなくて行き場のない気持ちを抱えることも、ストレスで蕁麻疹が出まくっていることも、シロの命に対する責任を負うことへの戒めなのだろうと思う。

今日、駅前の人通りの多い交差点の隅で、足早に歩くひと、信号を待つひとに踏まれそうになりそうな場所で、じっと小さくなってうずくまっているノラ猫をみかけた。いままでだったら、そんなに気にもならなかっただろう。でも、調子が悪いのか、怪我をしているのか、寒いのか、およそくつろぐにはふさわしくないその場所でうずくまっているノラ猫の姿を見た瞬間、胸がキュッとしめつけられた。どうしたんだろう?大丈夫かな?この子の姿は、シロだったかもしれないのだと思うと、たまらない気持になった。

うちに来て二週間が経ってから、病院でシロの血液検査をした。ノラ猫の多くが罹患しているといわれるFIV(猫エイズウィルス)キャリアだということが分かった。シロが推定2~3歳くらいだということも分かった。いくら「FIVキャリアだからと言ってみんなが発症するわけではない」と言われても、覚悟はしていたとはいえ、やっぱり悲しかった。もしそれが捨てられた理由ではないと仮定して、捨てられた後に感染したのだと仮定して、もっと早くなんとかしていたら、感染しなかったのかな?と考えても仕方ないことを、繰り返し考えた。でも、精一杯、全力で行動してきたはずだ。

一日でも長く穏やかな日々を過ごしてほしい。自分が猫を家族に迎えるなんて想像もしていなかった。ひょんなことから出会って、無我夢中でうちに連れてきたシロ。一日も早く、うちに慣れてくれるといいな。

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ということを考えながら、シロとの日々に思いを残しながらも、約三年ぶりにパレスチナへ行ってきます。

友人からのリクエストもあり、今回も必要とされる場所で、託されたお金を使って、託してくださる方の代わりにオリーブの苗木を購入して植えてきます。詳細は拙著『それでもパレスチナに木を植える』をご覧ください。

また三年前のように、急に計画を現場のニーズに合わせて変更することもあるかもしれません。いきなり家畜小屋を作り始めるかもしれません。木を育てたこともない難民の一家の豊かとはいえない瓦礫だらけの土壌に、育つかどうかわからないものを植えることになるかもしれません。それは、拙著に記したとおりです。また、ヨルダン渓谷などの状況が厳しい場所での畑や建造物再生プロジェクトへの参加、カンパにまわすかもしれません。「絶対にどこで、なにをします」と明確にはお伝えできずにお預かりすることになります。

もし、それでも構わなければ、ありがたくお預かりして、最善の使途を探って参ります。そして三月、ご報告いたします。

もしご協力いただける方は、mikairv★gmail.com(★を@に)へご連絡ください。出発の都合上、おおむね今月十日くらいまでにご連絡をお願いいたします。

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●『それでもパレスチナに木を植える』(未來社)
店頭にない場合は、書店でご注文いただければ幸いです。
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624411022

アマゾンからも購入できます。
http://amzn.asia/bUm0U7i



また、引き続き、下記の二冊の本のご注文もお待ちしております。

●『パレスチナ・そこにある日常』(未来社) 
版元の未來社のページ
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624410919

アマゾン
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%83p%83%8C%83X%83%60%83i%81E%82%BB%82%B1%82%C9%82%A0%82%E9%93%FA%8F%ED&x=10&y=21

●写真集『ボクラ・明日、パレスチナで』(ビーナイス)
http://www.amazon.co.jp/ボクラ(Bokra)%E3%80%80明日、パレスチナで-ビーナイスのアートブックシリーズ-高橋-美香/dp/4905389275/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1421878540&sr=8-2&keywords=ボクラ%E3%80%80明日

版元ビーナイスのページ
http://benice.co.jp/index.html

最寄りの書店でも、お取り寄せ可能です。

著者のサイン入りをご希望の方は、
mikairv★gmail.com(★を@に)までご一報ください。
ただし、この場合恐れ入りますが、本代と送料実費を頂戴します。

●写真集『ボクラ・明日、パレスチナで』に収められた写真のカード、Tシャツ、トートバッグをこちらからお求めになれます。
ビタミンTeeのページ
http://www.vitamin-tee.jp/?mode=cate&cbid=985137&csid=1

本日12月10日、無事にノラ猫のシロを保護しました。本当に辛くて長い一ヶ月でした。

シロの保護をして、うちで飼いたいと決めて、その費用を捻出するためにフォトブックやカレンダーを作成して販売、カンパまで頂戴しながら、シロと暮らせるペット可の物件探し、同時に「もしかして」とダメ元でいまの大家さんとの交渉を同時進行。なかなか大家さんから返事をいただけず、かと言って猫を飼える手頃な値段で、希望の条件の物件はみつからず、どんどん寒くなる一方。シロは急激に寒くなった時期、クシャミを連発し始め、寒さで元気もなくなり、心も閉ざし気味になり、焦るばかり。

「敷金をより多くお預けしてもいい、家賃を多少上げてもらっても構わない。この家で猫を飼わせてもらえませんでしょうか?」と何度も不動産屋を通して打診するも、正式なお返事、結論はなかなか返って来ず。

そのあいだの日々のことは、インスタグラムで「今日のシロ」として綴っています。ご興味があればどうぞ。mikairvです。

そして先週、ついに「とりあえず、当面は」つまり、今後近隣の方々とトラブルにならない限りは、引っ越さなくても済むことになり、あとはシロを無事に保護するだけ!と意気込んだ月曜日、「任せろ」と言ってくださった方に他人任せにしてしまい、失敗。シロはいつも以上に警戒レベルを上げ、一度無理矢理入れられかけたキャリーケースをひどく怖がるようになる。

翌日以降、いつもの時間、いつもの場所に顔を出して、警戒しながらごはんを食べるものの、様子がおかしいとすぐに察するシロ。ワタシひとりのときは、安心してそばでくつろいで、甘えるのに、ワタシにはシロを抱き上げることも、ひとりで洗濯ネットに入れることも、できる自信がない。

捕獲器を借りる、地域の保護ボランティアの方に相談する、いろんなことをひとつずつ重ねていこうとするも、返事がなかったり、いい返事がもらえなかったり、挙げ句の果てには相談に行ったシロがいる公園近くの動物病院では、「猫を飼った経験もないあなたにノラ猫の保護は難しい」と、否定的なことを言われる。地域の保護ボランティアの方についても「病院ではそのような紹介はしていない」と。難しいのは百も承知。経験がないからこそ、専門家にその困難を乗り越えるためには、経験のない自分になにが必要なのか?と問うているのに、解決策も示さず、否定するだけ。受付の女性は明らかに迷惑顔で「ノラ猫の保護、ね、はあ」みたいな。もう二度とこんな病院に来るものか、シロをこんな病院に連れて来てたまるかと、悔し泣きしながら帰る。

毎日シロは変わらずやって来て、ごはんを食べて、甘えて、日が暮れると闇の中に去って行く。寒い夜、明け方、シロのことが心配で眠れなくなる。

以前、公園に捨てられたシロを、人間不信のまま、過酷な環境のなかで短い生涯で終えさせたくない。穏やかで、安心して、日々を過ごしてほしい。暖かい場所で、安心して眠らせてあげたい。数日に一度、地域のボス猫に襲われて、傷だらけのシロを放っておきたくない。でも、そんなことを考えること自体が自分のエゴなのか?それとも、保護できる自信がない逃げや言い訳なのか?眠れない日々が続いた。

そして、トランプの「エルサレムをイスラエルの首都として承認」の発言、それに対する抗議、過剰な弾圧とシロのこと、パレスチナ情勢を追うこと、ギリギリの日々が続く。

話は前後するが、フォトブックを作成しているとPCが壊れ、さらには眼鏡まで壊れる。シロの保護、検査や必要であれば治療や投薬、そして手術にかかる費用、引っ越しもしくは敷金や家賃の積み増しに、かかるかもしれない費用もある。次の取材のための航空券代の支払い期日まで迫る。金銭的にもギリギリ、さらには免疫力が落ちているのか、高熱に襲われ、リンパは腫れ、口内炎はでき続け、一時期味覚を失いかけ、耳の周辺が腫れ...と、体調まで悪化する。弱り目に祟り目。ここまでくると神がかり、と苦笑する。

シロのいる公園に集う近所の方々からも、暖かい応援や、否定的な意見や、日々様々な声を掛けられる。そのことも、相当しんどくなってきた。ここまで、理解して、励まして、応援して、自分が休みの日になると一緒にシロに会いに行ってくれたパートナーが、弱音を吐いて諦めかけているワタシに「シロはミカを信じている。ミカもシロを信じてあげな。絶対に保護しよう。絶対にできる」と力強く言ってくれる。ワタシは、その言葉に勇気をもらう。

そして今日、パートナーの言葉どおり、無事にシロを保護して、隣の隣の市にあるノラ猫の保護活動に積極的に力を入れている動物病院にタクシーを飛ばす。普段はビンボーなので、もちろんタクシーなんて10年か15年に1度くらいしか日本では乗りません。でも、一刻も早くシロを安心させてあげたくて。

病院に着いて、事情を話すと「そうですか。よく頑張られましたね」と本物の営業用ではない笑顔を受付の女性からいただく。先日のことがあったから、ビクビクしながら話したのに、まったくの杞憂。診察になり、先生は「今日はシロちゃんの負担を考えて、ノミとダニの駆除だけにしましょう。ワクチン、虫下し、検診などはまた後日試みましょう」と、いろいろと丁寧に説明してくださる。まったく猫を飼った経験もないことも話すが、「懐いているみたいだし、病院で暴れたり、威嚇したりもせず落ち着いているし、何ヶ月もかけて関係性を築かれた甲斐がありましたね。大丈夫ですよ。なにかあったら、すぐに電話してください。一緒に頑張って行きましょう」と言ってくださる。そしてシロにも「えらいね、よく頑張ったね。またね、シロちゃん」とニッコリ。ああ、この先生は本当に動物の命を考えていらっしゃる方だ、ノラ猫だからと対応に差をつけることなく、難しいからと否定することなく、ひとつでも救える命に真摯に向き合おうとされている方だと、その笑顔に心から安堵する。

そんなわけで、保護してからただいま8時間半が経過。シロはごはんを食べたり、ウトウトしたり、爪研ぎをしたり、爪研ぎに着いたまたたびを舐めたりして過ごしています。どれだけ鳴かれるのだろうと覚悟していたけれど、いまのところはものすごく静か。でも話しかけると返事もするし、なでなでしても問題なし。しかしまあ、できるだけ暖かく、ひとりにして静かな環境で過ごしてもらっている一日目の夜。

さあ、大変なのはこれからなんだろうけど。でも、シロのことが本当に好き。シロのことが本当に大切。シロにはこの数ヶ月いろんなことを教わってきた。縁あって出会ったこの命を大切にしたい。シロのことを好きになって、シロをこんな辛い目に遭わせたヤツ、シロを捨てたヤツのことを憎みそうになっていたけれど、いつか、シロが本当に幸せになれたなら、シロを本当に幸せにすることができたなら、ワタシはその日が来たときは、あなたに感謝するよ。「シロをあなたが捨てたことで出会わせてくれてありがとう」と。そんな風に思える日が来るように、頑張らなきゃいけないね。

シロの保護にかかる費用を捻出するためにフォトブックやカレンダーをご購入くださったみなさま、カンパをお寄せくださったみなさま、ケージをくださり、捕獲器を無料しかも送料まで負担して貸してくださった上にかかりつけのお医者さんにワタシとシロのための相談までして力になってくださったMさん、本当にありがとうございました。

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