イメージ 1

その国に初めて降り立った瞬間「あ、この国好きかも」と思うときがある。今回、台北の松山空港に降り立ったとき、鼻腔をくすぐる生ぬるい甘い香りに「なんか、いいかも」と感じた。

最初に入った空港のトイレで、清掃状況などを評価する画面に怒り顔から笑い顔のクロクマ(なんでも台湾のシンボル的存在らしく、旅のあいだやたら目にした)が評価を待っていて、思わずタッチパネルを押した。設備の新しさや清潔度などはともかく、クロクマの表情に「うわあ、いいね、この国」と思った。

若いころは、とにかく遠い地を目指してばかりだった。そして行き着いたのが中東と中米。とにかく学生時代はその二地域にドハマりした。「日本と全然違うところ」「ともかく遠い場所」「せっかく行くならなにもかもに驚くような場所」という基準で、単細胞、単純だったワタシは二度ほど行った東アジアと東南アジアには背を向け、ヨーロッパや北米にも「そんなに日本と変わらんやろ」と背を向け、中東と中米に通ったのだった。(南米とアフリカが未踏、いつか行きたい)

でも、浅はかだった。どんなに遠い国、遠い場所にも普遍的な変わらぬものがあり、「先進国なんて大した違いがない」と勝手に決め込んでいたそれぞれの地に、それぞれの文化、特色があり、そんな単純なことに気づくまでに20年もかかってしまった。

となると、気になるのが台湾。若かりし頃のワタシは夏休みに行った友人から「いいところだった」と聞かされても、「せっかく行くのに、そんな近いところ?」と聞き流していた。そのときのことを思い出すと、自分の浅はかさに恥じ入るばかりだ。

今回の旅の一番の目的は、台中の彩虹村の黄さんが描いた壁画を見る、撮ること。パレスチナの分離壁に描かれる壁画、まだ未踏だがいつか行きたいルーマニアの「陽気なお墓」に描かれた絵、エジプト留学時代にハッジ(メッカへの巡礼)を済ませたひとが自分の家に描くハッジペインティング、なぜか、そういう名もない人びとが自分の人生やこめた思いを描く絵が気になって仕方がない。

彩虹村の詳細はまた別の機会に詳しく書くとしよう。印象だけ記すとすれば「ちょっとたどり着くのが遅すぎた」という感じか。黄さんにお目にかかることもできたし、壁画自体は素晴らしく、「人間はなぜ描くのか」という命題についてもいろいろ考えさせられたし、観光地として整備されたおかげでアクセスも楽になっているし、お土産をたくさん買ってわずかながらお金を落とすこともできたし、それでヨシといえばヨシなのだが。

でも「観光地化」ということについて、功罪ともに深く考えさせられた。まあ、この話はまた後日。多分。

旅の後半、完全に体調を崩してしまって、世界各国でどんなスパイスや香草が入った食べ物もわりと平気で平らげてきたのに、まさかまさかの美食の国台湾で、五香粉の匂いを受け付けなくなり、気持ち悪いわ、お腹は痛いわ、毎日アタマが痛いわ、眠れないわの四重苦。あの美食の国で、コンビニに駆け込んでレーズンパンを買って食べるという体たらく。しかもコンビニの店内も結構な匂いが。息を止めながら会計を済ませる。

旅の前半は、五香粉の匂いを受け付けないなんてこともなく、いろいろ食べていたので、体調が悪くなってなにかが過敏、過剰反応してしまったのだと信じたい。じゃないと次回また行けないじゃないか。

そう、また必ず行こうと思うくらいに、台湾いいところだった。

なんだか似ているのに、やっぱり違う。違和感がないのに、やっぱり異文化。街の雑踏に紛れ込むことができるのに、やっぱり異邦人。この不思議な感覚は、独特のものだった。

追い追い時間をみつけて綴っていけたらいいな。

****************************************

久しぶりに都内でパレスチナやアフガニスタン、クルドのおかあさんの手仕事(手織り、手刺繍)のクラフトの展示販売とパレスチナやアフガニスタンなど自分が出会った各国の人たちについてのスライドトークをします。

オリーブマーケット こもれび通り三軒長屋のクリスマス

日時:12月15日(土) 18時から

場所:カフェ・れら
国立市東1-16-7イルデュノール1階 JR中央線国立駅南口徒歩五分

参加費:千円