


ハナコさんはタイ生まれの象です。戦後復興の兆しに沸く日本に2歳半でやってきました。その前に、ハナコさんがやってきた経緯について少しばかり話をさせてください。
戦時中、空襲のどさくさに逃げ出すことを怖れられた動物達が殺されていった「猛獣処分」のことをご存知でしょうか?多くは餌に毒を混ぜられて処分されました。象は勘や嗅覚に優れているため、毒入りのえさをかぎ分け決して食べようとしませんでした。こうして、餓死させられました。戦後、動物園は再開されましたが、象の居ない動物園に子供たちはがっかりしていました。
こうしてハナコさんが平和の使者としてやってくることになりました。しかし、ハナコさんにはつらい運命が待ち受けていました。
夜中に酔っ払って侵入してきた人をパニックで殺してしまいました。さらに数年後、担当の飼育員も踏み殺されてしまいました。ハナコさんに殺意はありません。ただ、体が大きく、並はずれて体が重く力が強いのです。
二人をあやめてしまったことで、「そんな象は殺してしまえ」という議論が沸き起こりました。ハナコさんは鎖につながれ、暗い部屋に閉じ込められました。そして餌も食べず、心を病んでいきました。
そんなハナコさんの元に、新しい飼育員がやって来ました。この方が最初に行ったことは、ハナコさんの鎖を解くことでした。心を病んでしまった象に、全身全霊で愛情を注がれました。久しぶりに運動場へ出たハナコさんを待っていたのは、心ない人の罵声と投石でした。飼育員は体を張って、ハナコさんを守りました。ただ隣に一緒に立つことで。
それから長い年月がたちました。再びハナコさんは人間に心を開いてくれるようになりました。ハナコさんは現在60歳。象の年の取り方は人間とほぼ同じだそうです。還暦を迎えたおばあちゃん。
いつまでも、穏やかに過ごして下さい。
1)飼育員のお兄さんに草団子をもらいます
2)お兄さんとは大の仲良し。ハナコさんも笑顔です。
3)ふとした表情に、過酷だった年月が浮かびます。







