世界の笑顔に出会いたい

写真家・高橋美香のブログ。 公園にいたノラ猫のシロと暮らす。 カメラを片手に世界を歩き、人びとの「いとなみ」を撮影。 著作に『パレスチナ・そこにある日常』『それでもパレスチナに木を植える』(未來社)『パレスチナのちいさないとなみ』(共著)『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(かもがわ出版) 写真集に『Bokra 明日、パレスチナで』(ビーナイス)

2011年06月

 
ハムディがドイツへと発つ前々日、親戚、隣人が集まって、兄ハミースの家の屋上でお別れのBBQが開かれた。
 
パート1の登場人物は、ハイサム、ハムディ、ムハンマド、ソハイブなど、ごく少数。
 
まだ来客の大半は階下に居て、若手チームで必死に味付けチキンを焼いているところ。
 
BBQはこのあと、大笑いの盛り上がりをみせる。
 
(パート2へつづく)

 
解体が決まったフェンスを、村人たちが自ら取り除こうとトラクターを出動させたこの日のデモ
 
なんと、トラクターに実弾までもが撃ち込まれて、タイヤはパンク
 
Even with the new route, not all our land will be returned. But without popular resistance, none of this would have happened
「たとえ新しいルートが敷き直されたって、俺たちの土地のすべてが返ってくるわけじゃない。でもこの民衆の抵抗なくしては、わずかな土地が返ってくるということすらも、起こり得なかった」
 
こう話したのは、村の抵抗委員会を率いるひとり、ムハンマド
 
この日まで、村の土地の75パーセントを取り戻すためにおこなわれた闘いで、
 
1400人の怪我人、ふたりの死者、140人の逮捕者を出した…
 
亡くなったバーセムであり、ジャワーヒルであり、大けがを負ったハミースであり、アシュラフであり、ハイサムであり、逮捕されたアディーブであり、アブダッラーであり、イブラヒムであり…
 
それは、ワタシにとって、ただの数ではなくて、大切な友人たちが払ってきた犠牲

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パレスチナから帰ってきて三カ月、ようやくしばらくの間ひとところに落ち着くことが出来そうなので、誰に頼まれたわけでもないし、発表のアテがあるわけでもないのに、「パレスチナ再訪記2011年」の原稿を書いている。(どこかの出版社さん、どうか発表の場をください)

いま、ちょうどこの日「ハムディと一緒の最後の分離壁反対デモの日」のことを書いていて、そのためにこの日の写真を眺めていた。写真って、どんなメモより有効なときがある。一枚の写真から、忘れていたいろいろなことを思い出すことがある。

ただ、今日ブログに書くのは、ハムディのことじゃなくて、ハイサムのこと。

デモでガスを浴びて、きっと個人差があるんだと思うけれど、ワタシやハイサムは、必ずその日はダウンしていた。ハムディなんかは、割と平気そうだったけれど。一番てきめんに現われるのが、頭痛としてだった。デモが終わったあとは、頭が割れそうに痛んだ。

ハイサムも、デモが終わって、頭痛薬をガンガン大量に飲みながら、なんとかその日の映像を仕上げて、ネット上にアップして、そこまで終えると、いつも力尽きて床に倒れこんでいた。そんな日はいつも顔面蒼白だった。このひとは、本当に命を削りながら「占領」と向き合っているんだと、その姿を見ながら、何度も思った。

そんな父親を、心配そうにのぞきこむカルミ―を、優しく抱きしめて、ふたりで横になっていた。ベッドまで行くこともしんどいのか、PCのある居間の床にそのまま横になった。

「危なくないですか?」「ガスは体に悪くないですか?」よくそんな風に訊ねられる。危ないし、体に悪いのは間違いない。ひとが死んでるくらいだ。

それを分かっていて、ハイサムも村人も、毎週浴びている。「占領」されて、ひとは自らの尊厳を守りながら生きていくことはできないから。

自分の子どもたち、村の子どもたちのために。自分のために。

そして、いま、この瞬間も。

●ドキュメンタリー映画祭「監督と見る世界の今」のご紹介

※ドキュメンタリー映画監督中井信介さんのメールを転載

私は、主にフィリピンのドキュメンタリーを制作している中井信介と申します。
この度、6月25日(土)~7月3日(日)まで大阪のシアターセブン
(第七藝術劇場の下の階)で行われます映画祭「監督と見る世界の今」の中で、
6月26日(日)に一日中、私の作品が上映されることになりました。
(※詳しくは上映スケジュールをご覧ください)

ここでは、今までに私が制作したフィリピンとマレーシアを舞台にした
ドキュメンタリー映画、4本が上映されます。この機会に是非ご覧ください。
(※詳細は本文の最後に記載しています)

それから各回、監督による舞台挨拶があり、最終回の上映が終わった後には、
30分ほどのトークもあります。

上映スケジュール、入場料等
http://www.theater-seven.com/eiga_kantokutomirusekai.html

シアターセブンへのアクセス、問い合わせ先
http://www.theater-seven.com/access.html

この映画祭は、5人のドキュメンタリー映画監督が長年ライフワークに
してきたこだわりの映画を曜日ごとに公開するものです。

土井敏邦監督のパレスチナ問題の集大成とも言うべき、4部作一挙公開や
藤本幸久監督の福島原発問題、木村修監督のアメリカ反戦運動など、注目の
話題作に加えて、現在、先進国による開発の波にさらされ、先日は炭鉱開発
によるトラック事故で暴動が起こっているモンゴルの長編記録映画も上映
されます。

それから私、中井信介の以下にご紹介する作品は、滅多に上映されない
希少価値の高い映画ですので、この機会に是非ご覧ください。

「ナナイの涙」(2009年 100分)
91年まで米海軍基地のあったフィリピンのオロンガポ市。クラブやバーで
働いていた女性たちと米兵たちとの間に生まれたアメラジアンの、様々な
状況の子どもたちと母親との微妙な関係を追う。
座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル入賞、福井映画祭審査員特別賞。
(予告編) http://www.youtube.com/watch?v=th3C1tc8FdE 

「クアリ」(2004年 100分)
米軍基地が完全撤退したことで知られるフィリピン・スービック市のクアリ村。
村人にとって基地は、日常であり、恐怖であり、汚染源であり、収入源だった。
基地撤退後の住民たちの日常を追ったドキュメンタリー。ソウル人権映画祭出品。

「森の慟哭」(2010年 45分)
かつてサラワクは、世界中に熱帯木材を輸出する豊かな森を有していた。
しかし森林は急速に後退、残された二次林も次々とパーム・プランテーション
の海に飲み込まれていく。日本は、昔も今もサラワク木材の最大顧客である。
(予告編) http://www.foejapan.org/forest/palm/dvd_01.html

「闇に消された声2007」(2007年 55分)
2001年のアロヨ前政権発足以来、人権活動家たちの暗殺が相次いだフィリピン。
その数、1000人以上。そこには「テロとの戦い」を遂行していたブッシュ前米政権
の陰がある。権力に立ち向かう者たちを抹殺しようとするフィリピンの闇に迫る。

映像のなかでクレーン車によって撤去されている巨大な鉄塔は、24時間365日、村を監視する監視カメラ用の鉄塔。
 
もちろん、恒常的な撤去じゃなくて、他の場所に移動させるだけなんだろうけど。

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