世界の笑顔に出会いたい

写真家・高橋美香のブログ。 公園にいたノラ猫のシロと暮らす。 カメラを片手に世界を歩き、人びとの「いとなみ」を撮影。 著作に『パレスチナ・そこにある日常』『それでもパレスチナに木を植える』(未來社)『パレスチナのちいさないとなみ』(共著)『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(かもがわ出版) 写真集に『Bokra 明日、パレスチナで』(ビーナイス)

2012年11月

イメージ 1

カルナバル(カーニバル)最終日の夕方、ハバナの目抜き通り海沿いのマレコン通りはすごい人出だった。ワタシの旅も最終夜、ずっと夜は雨続きで一度ホテルに帰ると新市街や旧市街まで出ていくことが億劫になっていて、この夜までカルナバルを見逃していた。今日こそは!と、気合を入れてカルナバルが始まるのを待つ。

ハバナの人は、工夫したおしゃれをする人が多い。個性的。決して余裕のある暮らしではないと思うが、あちこちの市場や古着マーケットなどをまわって、おしゃれを楽しんでいる。ハバナの中心部には、店舗を構えた服屋さんもあるが、それは、驚くほど高い。誰がこんなの買えるんだろーと驚くが、外貨にアクセスできる層が確実にいるらしく、アディダスやプーマなどのショップには、ひとがあふれていた。冷やかしだけの人もいるだろうけど。

出会ったハバナっこは、総じて、品物不足や「豊かな」欧米へのあこがれなどに、キューバの現在への不満を口にするけれど、それでも、いま目の前のことを楽しむということに長けていた。カルナバルを待つ人たちも、そんな雰囲気に満ちていた。

マレコン通りを歩いていると、ふたりの若者に「どこから来たの?」と声をかけられた。しばらく話していると、カバンからウィスキーを取だし、「一緒に飲みながらカルナバルを待とう!」と誘われた。他意は感じられなかったので、しばらくウィスキーをラッパ飲みしながら、いろいろと話した。

じっとしているのも飽きてきたので、街を歩くといって彼らに別れを告げると、口々に「ハバナの夜を楽しんで!」「カルナバルを楽しんで」と手を振ってくれた。

すっかり季節も変わり、ハバナでの日々が遠い昔のことのようだ。

イメージ 1

新しい仕事を始めて、カルミーの臨終に駆けつけることができなかった。パレスチナはおろか宮古にも沖縄にも行けそうもない。連休というものがとれない…。確かに、生活は危機的状況から改善された。安定した収入というものはありがたいものだ。でも、なにを目標に、なにを心の支えにしていけばいいかも分からないまま、仕事にだけ追われている日々。カルミーのこともあり、心がもう凍てついて固まってしまっているような日々。

仕事帰り、ため息をつきながら疲労で重い体をひきずって駅に向かっていた。携帯電話に一件の着信。画面を見ると彫刻家の金城実さんだった。「おーい、ミカちゃん、元気でやっとるか?」と。地下鉄に乗るところだったので、すぐにメールを返した。「いま、仕事の帰りです。××(ここでは伏せます)で毎日カメラマンとして働いています。地下鉄に乗るので、電車を降りたら電話します」と。

自宅近くの駅に着いたので、電話をした。「そうか、元気に写真をやっとるんやな。おまえ、酒は飲みすぎるなとか年寄りの心配はせんでええぞ。俺ももう75や。そのうち朽ち果てて肥やしになっておまえらに踏まれていけばそれでええんや。大事なのはおまえら若い世代じゃ。しっかり頑張れや」と激励いただく。

「おい、孫よ。俺はおまえのこと忘れてないぞ。いまも大きな木に沖縄の基地とオスプレイをテーマに彫刻をほっとるからいつか来い。また会おうな」

実さんの言葉はあたたかく、いますぐ身動きとれずに、日々そのことで煩悶を繰り返すワタシを優しく諭し、元気づけてくださる。実さんに会いたいな。沖縄で基地問題とオスプレイと闘う実さんの姿を、またカメラを片手に追いたいな。

焦っても仕方がない。望んでもかなわないことは人生にたくさんある。でも、たった一本の電話が、カルミーの死で凍りつき、袋小路に迷い込んでいたワタシの心をあたため、解きほぐしてくれた。

実さん、本当にありがとう。

「サトウキビ畑の中で基地と闘うのも、おまえがコンクリートジャングルの東京で闘ってるのも同じや。頑張ろうな」。なんてあたたかい言葉なんだろう。。。

※写真は7月の服部良一衆議院議員(社民党)の後援会総会で挨拶をする実さん。実さんは服部さんの後援会会長なのです※

カルミー、入院前の最後の映像
 
この笑顔が愛しく、大好きだった
 
いつか、天国で会おうね
 
大好きな焼き栗もチョコレートも鶏の肝もイチゴもお菓子も、もう好きなだけ食べられるね
 
苦しいことも、しんどいこともなにもない世界だよ
 
カルミー、みんなが順番に行くまで、もうちょっとそこで待っててね
 
大好きなものに囲まれて、待っててね

長い闘病生活、よく頑張ったね。

最期は、お父さんにもお兄ちゃんにも会えたね。

天国では、楽しいことばっかりだよ。

カルミー、大好きだよ。ずっと忘れないから。




みなさま、せっかくカンパをお寄せいただいたのに、間に合わなくて申し訳ありませんでいた。

いまから四時間ほど前にカルミーは病院で息をひきとりました。

お寄せいただいたカンパは、もうすでに知人が現地へと持って行っていますので、病院での清算やカルミーのお葬式やカルミーの治療費でいままでにハイサムが背負ってきた借金に充てさせていただいてもよろしいでようか?

どうぞご了承をお願いいたします。

白血病と闘うカルミーの容体は依然予断を許しません。現在、集中治療室で治療が続けられています。いまのままでは、家に戻って家族そろってひとときを過ごすことは難しいようです。

ここ数日、カルミーの容体は一進一退を繰り返しています。昨日は、イスラエル人の活動家が車にカルミーのお兄ちゃんのムハンマドを乗せて病院にひとっ走りしてくれ、ムハンマドは数か月ぶりにカルミーと対面を果たしました。

母親のハウラも、ムハンマドを抱きしめながら、久しぶりに病室に笑顔が戻ったそうです。ムハンマドもたったの10歳で、母親と離れておばあちゃんの家で暮らさざるを得ません。久しぶりの母親との対面に、ムハンマドは笑みを浮かべていたそうです。

一方、ハイサムは治療費などを工面するため、一番大切にしていたカメラを売り払ったそうです。それを聞いたイスラエル人の活動家たちがお金を出し合って「ハイサムのカメラを買い戻そう」と、奮闘してくれているそうです。

さて、今日までにお寄せいただいたカンパ25万8970円を送金したことをこの場でご報告いたします。ブログを通して友達になった少なくない方々がカンパをお寄せくださいました。そんな皆様に、心よりお礼を申し上げます。

なお今日の送金以降に届きましたものは、順次、信頼できる渡航者を探して託す、次回自分が持っていく(時期は未定)、ハイサムに直接送金するなど、最善の方法を探していきます。

ひとまず、ありがとうございました。

☆追記☆
この夜から翌日さらにお預かりした8万円を足して、総額33万8970円を現地に渡航する知人に託しました。多くの皆様に心よりお礼を申し上げます。

↑このページのトップヘ