
先日のシャーズィヤ同様、ワーシックも当会が学校の支援を始めたとき入学したての一年生だった。彼は、学校でクルアーン(コーラン)を教えるムッラーカリームの息子。そんなことを知ったのは、つい数年前の話だが。
ワーシックが七年生(日本でいう中学一年生)くらいのとき、彼が成績優秀でクラスで一番だったので表彰したことを覚えている。その後も(多分それ以前もずっと)彼はクラスでぶっちぎりの一番だった。
山の学校を卒業した彼は、歩いて二時間ほどかかる下の町の高校(リセ)に通った。ワーシックと同年代だったワタシの居候先のヤシン家の次男ワーレス、三男バーエスは「ワーシックは高校に入ってもぶっちぎりだよ」と。
そして、エンジニアを目指す彼は、全国一斉大学入試試験(コンクール)を受けてバグラン大学工学部に入学しようとした。彼の点数であれば、希望すれば、ほぼどの大学でも行けたであろう。なんと彼は、パンジシール州全体で三番の成績でコンクールをパスした。
しかし、国立大学の授業料は無料とはいえ、希望する大学のそばに親戚でもない限りは寮費や下宿代がかかる。そのうえ、実家に帰省する際に、遠ければ遠いほど交通費もかかる。入学する大学は、そういうことも考えてから決めなければならない。アフガニスタン全土が安定とは程遠い現状では、大学のある地域の治安や帰省などの際の道のりの治安なども考えなければならない。実際、ヤシン家の次男ワーレスは、入った大学が遠いうえに、その道のりも危険なことから、しばらく実家への帰省をあきらめている。
結局、ワーシックはカピサにある国立大学アルベルニ大学工学部を選んだ。カピサはパンジシールからもさほど遠くない。帰省する道中の治安の悪化もいまのところ見られない。
「卒業生に話を聞かせてもらいたいから、週末に帰ってくる子がいたら知らせてほしい」と、先生たちや村のひとたちに頼んでおいた。そして、週末ワーシックが帰省するというので、インタビューのため学校に立ち寄ってほしいと伝えておいた。
ワーシックに会うのは数年ぶりだった。ワタシたちが山の上に車で上り、ワーシックが山の上から下の町の学校に通うために歩いてきて、ほんの一瞬すれ違って手を振ることはあったが、ゆっくり対面するなんて本当に久しぶりのことだった。
目の前で微笑み、握手を交わすワーシックは、いつの間に、すっかり青年になっていた。金髪で目の色の緑がかった少年は、すっかり大人になっていた。「いやあ、立派になったねえ」と、近所のおばちゃんみたいに、肩をたたきそうになったよ。
ワーシックは、山の学校で過ごした九年間の思い出や、自分の夢を語ってくれた。「ノートやカバンや学用品の支援は、現金収入があまりない村の生活では本当に大きな支えであったし、それがあったから学業を続けられた」と語った。
彼は、いま留学準備中。これはコンクールで成績が優秀だった者が「国費留学生」としての権利を与えられる制度による。サウジアラビアの大学で工学を学ぶ予定だという。「留学して、少しでも外の世界の進んだ技術を学んで国の発展に寄与したい」とワーシックは話した。夢を語るワーシックは、本当にまぶしかった。
「サウジに大学してアラビア語をマスターしたら、今度はアラビア語で会話できるね!」と軽口をたたくと、ワーシックは微笑んだ。
種を植え、水を注ぎ、どんな花々が地表に出てくるのかも分からないまま、その育て方も知らずに手探りで続けてきたような支援活動。ようやく地表から芽が出てきたことに喜びながら、気が付けば、それが立派なつぼみになりつつあることを実感して、驚いているような現状。
子どもたちの夢は、どんな大輪の花となるのだろう。それぞれの夢をかなえてほしいと思う。
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*大学進学支援を募っています*
下の町の高校卒業後の大学進学を希望する生徒のため、支援を募っています。予定では、来年高校を卒業するマリナのためです。ただし、本人が希望校、学部に受からなかった場合、対象者に変更があるかもしれません。
国立大学の場合、授業料はかからないまでも、教材費と下宿や寮などでの生活費に、最低でも年間15万円ほどかかると聞いています。四年間で60万円。
ご賛同いただける方がいらっしゃいましたら、ご支援をよろしくお願いいたします。
mikairv★gmail.com(★を@に) にご連絡ください。詳細をご説明いたします。
また、ご支援をくださった方々には、ワタシからのお礼として、アフガニスタンのポストカードセット、またはプリントをプレゼントいたします。(ただし三千円以上の場合)
*お知らせ*
「アフガニスタン山の学校支援の会」の活動は、当初の予定を延長して、この先も支援を継続していく予定でおります。
「第二期」会員募集や寄付なども今後受け付けて参ります。
詳細については、会の公式発表をお待ちください。
また9月には大阪高槻、東京武蔵境でそれぞれ報告会をおこないます。
9月4日(日)大阪・高槻 今村学園こども園ホール
9月10日(土)東京・武蔵境 武蔵野スイングホール
http://www.h-nagakura.net/yamanogakko



