
アブーアリーが殺されたことを知って、三日目がやってきた。
なにをしていても、アブーアリーとの思い出がよみがえる。
彼が、腹部を撃たれて救急車で運ばれる際に、意識を失う直前、薄く目を開けてなにかをつぶやいている映像を観た。その最後の言葉を、彼の横で聴いていたのはAだった。決して公の場でこの名を明かすことはできないし、仮に彼をAとしておく。Aはわたしのとても親しいひとだ。そんな言葉ではあらわせないけど、とりあえずそこまでにとどめておく。
つまり、Aもアブーアリーと一緒に、キャンプに侵入してきたイ軍兵士と戦っていたのだろう。
アブーアリーの意識を覚醒させるために、救急車のなかで、Aは必死にアブーアリーに声をかける。でも、なにかをつぶやいたところで彼は意識を失い、その後、二週間の危篤状態におかれ、亡くなった。アッラーイェルハムー。
Aが「仲間」として、証言した映像も観た。アブーアリーは「殉教したい」となにかにつけてAに語っていたそうだ。そして「殉教」した。泣きはらした目でそれを語るAの姿。同じく泣きはらした目で銃を片手にアブーアリーの葬列の先頭に立つA。もう覚悟を決めているのだろうと思う。
「殉教したい」という言葉の裏側にある、「尊厳のある人生を生きていたかった」という強い思い。そんな人生であれば、誰が「死ぬことを覚悟で戦う」ことを選ぶだろうか。
同じ難民キャンプで「占領下で尊厳を奪われ、ただ生きながらえることが『生きている』と言えるのか?」と、母親に投げかけた言葉。その母は、「どんなにみっともなくてもいいから、生きていてほしい」と返した。この母子の心から血を流すような葛藤が、伝わるだろうか?
「殉教したい」と口にするアブーアリーに、どれだけの葛藤と悩み苦しみがあったのかと思うと、わたしはやはり「見殺しにしたのだ」と確信する。もうずっと、わかっていた。尊厳のない生の絶望感を、感じていたはずなのに。前にもハムザを「見殺しにした」のに。
どんな言葉も虚しい。本をつくって、語って、それを「伝える」ことの意味がよくわからなくなる。友達の尊厳もまもれず、その命も救えず「見殺しにしている」自分が「伝える」って、なんのためなんだろう。彼らは「伝えられる」ために生まれてきたわけでも、その人生があったわけでも、殺されたわけでもない。
もう無理、もうやめたい。虚しい、「意味」がわからない。どれだけ頑張っても、親しい大切なひとたちが死に逝くことすら止められない。
そうやって泣いていたとき、3/10、3/11の出版記念会の主催者高山さんから、イベントの手書きチラシが届いた。正直に言うと、それを目にするまでは、高山さんにも宇夫方さんにも関係者のみなさまにも、なにより参加を申し込んでくださった方にも申し訳ないけど、断る気持ちと半々だった。もうさすがに無理だと思った。自分自身が「伝える」意味がわからないのに、「伝える」ための本とかトークとか、なんの冗談だよって気がした。
でもね、高山さんが書いてくれた手書きの文字を読んでいると、「ああ、ここにもひとり、悩み哀しみもがき、足掻きながら、確かに一緒に『考えよう』『想像しよう』『立とう』としてくれているひとがいる」と感じた。なにも言われなくても、このチラシだけで十分伝わってきた。だから、これだけは、ともかくやると決めた。これだけはやると思ううち、とりあえず、いまもうすでに動き始めていることだけは、やると決めた。
アブーアリーが、悩み苦しみぬいて「殉教」を決めたことを、「なかったこと」にしてたまるかと思う。消されてたまるかと思う。ただその一心かもしれない。
わたしの「伝える意味」なんて葛藤は、どうでもいい。そんなもん一生ひとりで悩んでろ。
アブーアリーが生きていたことだけは、絶対に消してたまるか。そのために語らなければ残せないなら、書かなくては「消されてしまう」なら、この世に生きている限り、やるしかないんだとわかっている。
アブーアリー、どうか安らかに。
Aに「まだこっち来んなよ」って言ってやってほしい。
Aに対して、一番「伝わる言葉」をもっていたのは、アブーアリーだったから。
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"ママとマハとミカとアブーアリー”(独断で勝手にタイトル変えちゃった)
~『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』出版記念~
主催者(高山正樹)から。。
残された時間、徹底的に沖縄にこ
いわば「沖縄~パレスチナ~そし
皆様のお越しを、心からお待ちし
会場:M.A.P.(狛江の小さ
日時:3月10日(金)19:0
3月11日(土)14:0
参加費:本付き 3000円
本無し 1500円
リモート参加もOK(サ
高校生以下 500円
リモートはZoomでの開催を予定
会場定員各回15名
※今回は入場者を少数に限定しま
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