



パレスチナに好きなひとはたくさんいるけれど、圧倒的に、掛け値なしに好きなのはビリン村のパパとママ(『パレスチナ・そこにある日常』の表紙のひと)、ジェニン難民キャンプのかーちゃんマハ(『それでもパレスチナに木を植える』の表紙のひと)だ。パレスチナが恋しくなるというより、この三人が恋しくなることが多い。
ママは毎回別れの最後に「これがもう今生での最後の別れになるだろう。ミカが今度戻ってくるころには私は天に召されているからもう会えないだろう」とさめざめと泣く。それを眺める「兄弟」たちは「ああ、また始まったよ」と笑うが、前回ばかりはワタシには笑えなかった。それほどママの体調は悪化していたから。でも、どうやらまた再会は叶いそうだ。一刻も早くママに会いたい。この三年間で何度「ミカの幸せを願う歌」を即興で歌ってくれたママのビデオを観たことだろう。ママにとってワタシの姿は、九年前の若かりし?頃の姿のままだ。ママの目が見えなくなって久しい。この九年のあいだで決定的に変わってしまったことのひとつ。そして、いまはもうパパまでが視力を失っている。毎日リュックサックにパンと野菜を詰めてラジオを聴きながら放牧に行っていたパパの姿はもう二度と見ることができない。
マハとは何年にもわたってながいときを一緒に過ごしながら、喧嘩をしたことが一度もない。すべてはマハの懐の深さがなせるわざ。不条理、理不尽なことも、悔しいことも、悲しいことも、すべてを「神の思し召し、神が自分に与えた試練」と受け止めて淡々と前に進もうとする彼女の姿は圧倒的だ。小学校しか出ていない彼女は学歴こそないものの、ものごとの本質をみつめ、とらえる力は並大抵ではない。苦労に苦労を重ねた人生で身についたものなのだろうか。
マハは倹しい生活のなかで、精一杯楽しいことを探そうとする名人だ。どれだけ生活が苦しくても、どれだけ辛いことがあっても、それでもなお冗談を飛ばし、なにかを探そうとする彼女を、ワタシは深く深く尊敬している。
彼女の実家から、ポットにワタシたちふたりとも大好きなコーヒーを入れて、数百円分のお菓子を買って、夕暮れどきに夕日を眺めに行った日のことは深く印象に残っている。前日、ふたりで日雇いの農作業に行ったが、そこで稼いだ額はたった1500円ほどだった。数百円分のお菓子、それはワタシたちにとっては「ぜいたく品」だった。でもマハは笑いながら「ミカ、心配しなくていいよ。いまを楽しもう。お金がなくなったらまた農作業に行こう」とお菓子でパンパンに膨れた袋を掲げた。
西に沈む夕日の方角にはパレスチナの村とは少し違った「街」の灯りが見えた。「あの方角にはテルアビブやヤッファの街がある。いまの私たちには決して行けない場所だけど」とつぶやいた。本当に目と鼻の先のように見えた。分離壁や検問所で隔てられ、「イスラエル側」にある町と「パレスチナ側」の町や村々は遠く隔てられているように感じるけれど、距離にしてみれば、ほんの数十キロに過ぎないのだ。美しいけれど、悲しい光景でもあった。
マハは感傷的なワタシの表情に気づくと「インシャーアッラー、すべてがうまくいくよ」とお菓子を頬張りながら笑った。マハの笑顔は不思議な力を持っている。たくさんの苦難を味わい、かみしめ、それらを咀嚼して、その先に浮かべた笑顔。
「お互いにおばあちゃんになっても一緒に笑おう」とマハが言ったことがある。クシャクシャの手をしたおばあちゃんのワタシが、クシャクシャの皺だらけのおばあちゃんになったマハの笑顔を撮る、そんな日のことを想像してみる。
それは、当たり前の平穏な日常と、命があってこそ。
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約三年ぶりにパレスチナへ行ってきます。
友人からのリクエストもあり、今回も必要とされる場所で、託されたお金を使って、託してくださる方の代わりにオリーブの苗木を購入して植えてきます。詳細は拙著『それでもパレスチナに木を植える』をご覧ください。
また三年前のように、急に計画を現場のニーズに合わせて変更することもあるかもしれません。いきなり家畜小屋を作り始めるかもしれません。木を育てたこともない難民の一家の豊かとはいえない瓦礫だらけの土壌に、育つかどうかわからないものを植えることになるかもしれません。それは、拙著に記したとおりです。また、ヨルダン渓谷などの状況が厳しい場所での畑や建造物再生プロジェクトへの参加、カンパにまわすかもしれません。「絶対にどこで、なにをします」と明確にはお伝えできずにお預かりすることになります。
もし、それでも構わなければ、ありがたくお預かりして、最善の使途を探って参ります。そして三月、ご報告いたします。
もしご協力いただける方は、mikairv★gmail.com(★を@に)へご連絡ください。出発の都合上、おおむね今月十日くらいまでにご連絡をお願いいたします。
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●『それでもパレスチナに木を植える』(未來社)
店頭にない場合は、書店でご注文いただければ幸いです。
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624411022
アマゾンからも購入できます。
http://amzn.asia/bUm0U7i
また、引き続き、下記の二冊の本のご注文もお待ちしております。
●『パレスチナ・そこにある日常』(未来社)
版元の未來社のページ
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624410919
アマゾン
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%83p%83%8C%83X%83%60%83i%81E%82%BB%82%B1%82%C9%82%A0%82%E9%93%FA%8F%ED&x=10&y=21
●写真集『ボクラ・明日、パレスチナで』(ビーナイス)
http://www.amazon.co.jp/ボクラ(Bokra)%E3%80%80明日、パレスチナで-ビーナイスのアートブックシリーズ-高橋-美香/dp/4905389275/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1421878540&sr=8-2&keywords=ボクラ%E3%80%80明日
版元ビーナイスのページ
http://benice.co.jp/index.html
最寄りの書店でも、お取り寄せ可能です。
著者のサイン入りをご希望の方は、
mikairv★gmail.com(★を@に)までご一報ください。
ただし、この場合恐れ入りますが、本代と送料実費を頂戴します。
●写真集『ボクラ・明日、パレスチナで』に収められた写真のカード、Tシャツ、トートバッグをこちらからお求めになれます。
ビタミンTeeのページ
http://www.vitamin-tee.jp/?mode=cate&cbid=985137&csid=1