
この一週間ほど、ずっと沖縄の金城実さんから電話をいただいていた。
参院選で現職の大臣を破り、伊波洋一さんを議員として選ぶことで「民意」を示した沖縄。しかし、その腹いせ、報復かのように高江での「沖縄の基地負担軽減」の名のもとの基地移設、新設工事が始まった。
実さんからの電話に出られず、タイミングよく折り返せず、高江のことでイライラ、キリキリしているワタシは、思いをハガキにしたためて実さんに送った。
三月、大阪のお寺でお話をされる実さんに会いに行こうと、手元不如意なワタシはANAのマイルを使った特典航空券で大阪に旅立つことを予定していた。実さんと奥さんのハツコさんからは「じゃあ、一緒に昼飯を食おう」とお誘いをいただき、その日を心待ちにしていた。昨年九月にアトリエをおたずねしたとき以来の再会となるはずだった。
しかし、システム障害で飛行機は飛ばなかった。マイルを返還してもらって新幹線で行こうにも、その新幹線代もなく、しかも新幹線ではもう間に合わなかった。再会はかなわなかった。
ワタシは、ことあるごとに実さんのことを考える。悩んだとき、迷ったとき、心が折れそうなとき、実さんの言葉を思い出す。電話がかかってきたのも、ちょうどそんなときでもあった。
知花昌一さんと一緒に向かった高江でのことを、電話口で改めて聞かせてくれる実さん。悔しさでキリキリして、現地に向かうことが出来ていないことに焦るばかりのワタシ。生活が苦しいことをいつも気遣い、心配してくださり、ポーク缶を送ってくださったり、「写真展開催のお祝いに」とお金を包んでくださったり、そしてなにより、ご自分の経験を語り「あきらめるな」と励まし続けてくださる実さん。「焦るな。生活を犠牲にするな。おまえはおまえの場所でできることをやったらいい」と、ワタシに言葉をかけてくださる。
けれど、「生活を犠牲にした闘い」を強いられている、また「生活そのものが闘い」にされてしまっている、沖縄を含めた世界中の人々のことを思うと、その不条理さが悔しくて、やりきれなくなる。
ちょうど同じころ、ビリン村の分離壁反対運動に携わる友人(というか悪友)のアシュラフがまた逮捕された。もう何度目なのかは数えきれない。彼の行動をずっとみつめつづけてきたワタシには断言できる。彼は石すらも投げないし、なにひとつ暴力的な行為なども犯さない。しかし村人たちの土地に勝手に入り込んできて「軍事閉鎖区域」に指定し、そこでの一切の行動の自由を奪い、口頭で抗議することだけでも「軍の任務の遂行を妨害した」として逮捕される現実の前で、ワタシは口を開く気力すら失くしそうになり、言葉を紡ぐことをあきらめそうになり、虚しさに負けてしまいそうになるときがある。
欧州某国に「難民」として逃れ、収容され、無一文で過ごしているアフガン人の友のことを思う。カーブルで「電力へのアクセスを求めた」ハザラ人主体のデモが自爆攻撃され、多くの方々がテロの犠牲となった。悲しすぎる。パリやニースやミュンヘンの人々に「祈りをささげる」ひとのうち、いったいどれほどのひとがカーブルで殺されたひとを思い、”pray for kabul”を表明するのだろう。それはアレッポと変えても、バグダッドと変えても、イエメンとしてもいいのだが。。。
そんなことを思い、感情がグチャグチャになっていると、軍に連行され、兵士に取り囲まれているアシュラフが笑顔でパレスチナの旗を掲げてピースサインを掲げている写真が送られてきた。
アシュラフはどれだけ逮捕、収監されても変わらない。兄姉を殺され、自身も兵士に拘束されて目隠しをされて座らされたその場で至近距離から脚を撃ち抜かれたこともある。明らかなリンチ。まさかそのような場面が近隣の家の窓から隠し撮りされているとも知らず、兵士は非道な不法行為を堂々と犯した。撮影者は自身に降りかかる弾圧を予期しながらも、その映像を公開した。
国を相手に「負けると分かっていた」裁判を闘い、裁判の過程でその欺瞞を明らかにしようと試みた実さんも、アシュラフも、ここにその名を挙げることは出来ないけれど、それぞれの現場で闘いつづけている多くの人々も不屈だと感じる。その不屈さゆえに弾圧される。ビリンでも、徹底的に弾圧され続けているのは、アシュラフやアブダッラーのように、徹底的に非暴力で抵抗する「不屈のひと」。それを一番恐れている。
そんなことを考えていると、少しだけ元気が出てくる。自分には「不屈」の強さはないけれど、そうありたいと努力を重ねることくらいは出来そうだ。そう思うと「おまえはおまえの場所で」という実さんの言葉が、心にしみこんでくる。
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まだまだ先の話ですが、9月24日(土)久しぶりに西東京市芝久保公民館の講座ででパレスチナ、アフガニスタンのお話をします。
市内在住、在勤者優先ですが、空きがあれば市外の方も申し込み可能。
お申し込み方法や詳細はコチラ
http://www.city.nishitokyo.lg.jp/enjoy/kouminkan/heiwawokanngaerukouza.html





